クルマを運転する時に、自分がどんな走りをしているのかを客観的に評価できますか?「安全運転に徹している」とか「運転はうまいほう」、あるいは「ちょっと運転は苦手」といった表現はできても、具体的に何が良くて何に気をつけなければならないのか、という評価をすることは難しいでしょう。
そんなあなたの運転を、スマホを使うことで見える化してくれる自動車保険が発売されました。しかも、運転の仕方によって保険料が戻ってくるというインセンティブ付きなのです。
この運転の見える化に挑戦したのは、ソニーグループの開発陣です。スマホにはGPSと加速度センサーなどが備わっており、運転した際にどのようなデータが現れるのかを分析。そこから得られた膨大なデータをもとにAIを活用することで、市販されているスマートフォンで運転診断を行う仕組みを開発しました。
実は欧米では、運転の仕方によって保険料が変わるタイプの自動車保険が増えています。一般的にテレマティクス保険とも呼ばれています。自動車保険というと、保険を使わなければ年々割安になり、走行距離や年齢、クルマの種類などによっても価格が変動しますが、ソニー損保のテレマティクス保険「GOOD DRIVE」は運転の仕方によって事故のリスクが低いと評価されると、保険料が最大30%戻ってくるというもの。事故が減少すれば、その分支払う保険金が少なくなるので、余った保険金の一部を契約者へキャッシュバックするという世の中的にも懐的にも嬉しい仕組みなのです。
そんな先進的な保険「GOOD DRIVE」のサービスを体験してみました。
GOOD DRIVEってなんだ?
ソニー損保のテレマティクス保険「GOOD DRIVE」に申込むと、セットアップキットが届きます。はじめに、「GOOD DRIVE アプリ」をダウンロード。ログイン方法はセットアップガイドに記載されているので簡単です。位置情報などの利用許可をチェックするだけで、セットアップが完了。その他、キットの中には、「GOOD DRIVEデバイス」というビーコンが入っています。ビーコンってあまり聞き慣れないかもしれませんが、省電力型Bluetoothを利用した機械のこと。このビーコンをアクセサリソケットに挿し込んでおくと、クルマのエンジンをかけることでビーコンが自動的にオンとなり、電波を発信します。先ほどセットアップしたスマホがビーコンの電波を受信することで、自動的に「GOOD DRIVE アプリ」が起動。運転状況を記録するモードになります。
▲「GOOD DRIVEデバイス」(ビーコン)はアクセサリソケットに挿すタイプ。USB端子を備えており、スマホの充電も可能です。
運転するたびに、自分でスマホのアプリを起動して、記録を開始するという作業が必要だと、いくらいいサービスでも面倒で敬遠されてしまうでしょう。このサービスがよく考えられているところは、そうした操作を「GOOD DRIVEデバイス」によって解消することで、シームレスに(意識することなく)サービスを利用できるところです。
最後に「GOOD DRIVEデバイス」をアクセサリソケットに挿し込むだけで準備完了です。
運転の評価は4つ。ブレーキとアクセルワーク、ハンドル操作、そして運転中にスマホを操作したか否かで判断され、運転全体のスコアとともにキャッシュバックの金額が表示されます。走行したデータは逐次蓄積され、どこの場所でどういう判定があったのかもあとから確認できます。
▲スコアだけでなく、走行したルートとともに、どこで良い運転、イマイチな運転をしたのかが可視化されるため、あとから「あのときの運転かぁ」と気づきを与えてくれます。
さらに「GOOD DRIVEデバイス」には、緊急連絡ボタンが用意されていて、万が一のときは保険会社への連絡とともに、現在地も通知してくれるため、そのあとのやり取りもスムーズに進む仕組みになっています。もしものときは平常心ではないでしょうし、保険証券を探して電話番号を見つけて......といったことがないのはとても助かることと思います。
実際にクルマに装着して体験してみた
アプリの簡単な説明をしたところで、実際にクルマを運転してみてどんな評価をされるのか、運転に対する意識が違う2人が約1週間使ってみました。1人は運転歴30余年の筆者。クルマは大好きで運転はうまいほうだと自負しています。ただ、若いころに濡れた路面でリアが滑って壁にぶつけること2回、さらに右折時の事故に遭うなどして保険を使いまくった結果、保険料がとんでもなく高くなった経験もあります。現在はノンフリート等級が20等級となり、今年人生初めてゴールド免許になりました。ミニバンを運転し、取材や旅行時に利用。1回の運転は長距離が多くなっています。
アクセサリソケットに「GOOD DRIVEデバイス」を取り付けるだけで準備完了です。エンジンをスタートさせれば、スマホを操作しなくてもアプリが起動して自動的に計測を開始します。
▲同梱していた「GOOD DRIVEデバイス」(ビーコン)をアクセサリソケットへ挿し込みます。エンジンをスタートすると、丸いLEDランプがボワッと光るデザイン。
最初届いた時点でのスコアは、43点のDランク。つまり、キャッシュバックがない状態からスタートします。スコアとランク、キャッシュバック率の関係については以下の表のようになっています。
運転スコア | ランク | キャッシュバック率 |
90点以上 | S | 30% |
80点以上 | A | 20% |
70点以上 | B | 10% |
60点以上 | C | 5% |
59点以下 | D | なし |
▲スタートは、43点のDランク。エンジンをスタートさせれば、自動的に計測を開始してくれるため、特にスマホを操作する必要はない。実にシームレス。
画面には、赤い乱れた線で円が描かれています。これは、運転のスコアに合わせて、スコアが低いと乱れた線で表現され、高いときれいな線になります。乱れた線は「ちょっと運転が乱れてますよ」というようなイメージでしょうか。
まずは試しにと、自宅周辺を短時間走ってみました。時間にして5分程度走った結果、エンジンをオフにしてスマホを確認してみると、なんと一気に85点へジャンプアップ。ランクはAです。やはり、このサービスを意識したからでしょうか。ブレーキもハンドルも、滑らかになるような操作を意識している自分がいました。
▲まず試しに走ってみたら、いきなり85点にジャンプアップ。GOODな運転操作だけが記録されました。
続けて、10分程度走ってみた結果、運転スコアはなんと97点に! GOODブレーキは1回、GOODアクセルは3回の判定でした。ただ、途中右折車が急に飛び出してきたため、ブレーキを掛けたのですが、それが急ブレーキ判定になってしまっていました。どこで、どういう判定をしたかは、メニューにある「これまでの走行記録」から確認可能です。あとから確認できることで、「あのときちょっと運転が荒かったかな」といった反省もできるわけです。
▲気を良くしてもう少し走ってみると、97点のSランクに。ただ、1回急ブレーキ判定されたため、100点にはならなかった模様。
ちなみに、計測したデータは、運転終了後にサーバーへ送られて運転診断が行われます。なので、走行した時間にもよりますが、しばらくしてからスコアが判定されます。このため、クルマを運転しているときは特に意識せず、帰宅してから家でゆっくり確認するのがオススメです。
翌日仕事で片道約50キロを移動しました。一般道だけでなく高速道路を利用するため加減速が多いコースでしたが、このときはサービスのことをあまり意識せず、普段どおりの走りで運転してみました。
その結果、スコアが82点に大幅ダウン! 前日まで高スコアが出せたことで少し調子に乗ってしまったのかもしれません。GOODブレーキは13回、GOODアクセルが8回、GOODハンドルは2回計測されたものの、急ブレーキが1回、急アクセルが4回とアクセルワークが荒かったようです。高速道路の料金所を通過したときや、信号待ちからのスタートなどで少し加速しすぎたのでしょう。そのときは自分としては急アクセルとは感じていませんでしたが、今後はより優しいアクセルワークを心がけようという気づきを与えてくれました。
▲急ブレーキ1回、急アクセル4回と判定されて、82点にダウン。急アクセルの1つは、料金所での加速でした。なお、「走行時間」には、信号待ちなどでクルマが走行していない時間は含まれないようです。
それから1週間、クルマで移動する際はアクセルワークに気をつけつつ運転。急アクセルや急ブレーキがたまにみられたため、スコアは思うように回復しませんでした。結果的には83点のAランクで、Sランクが当たり前だと思っていた筆者としては、ちょっとショック。運転はうまいほうだと思っていましたが、潜在的に事故につながる可能性のある運転をしていたわけです。このサービスがなければ、そんな自分に気づかなかったかもしれません。改めて自分の運転を見直し、意識して優しいアクセルワークとハンドル操作を心がけようと思いました。
▲運転を意識してみたことで83点まで回復。画面上部にどうすべきかが表示され、タップするとアドバイスが表示されます。
もう1人の被験者は妻で、先ほどまでとは別のクルマで試してみます。免許取得からは年月は経つものの、実際頻繁に運転するようになったのはここ10年。運転は苦手ではないものの、得意というわけでもないレベルです。軽自動車を利用し、仕事やお買い物、子どもの送り迎えなど1回の運転はそれほど長い距離は走りません。
最初、妻にはこれがどういったものかを伝えませんでした。まずは普段どおりの運転がどの程度なのかを知りたかったからです。
▲軽自動車で子どもたちを乗せて運転する機会が多い妻。子どもの笑顔のためにも、事故のない運転を心がけたいところ。
筆者は同乗せず、子どもたちと3人で遊びに行きましたが、結果はいきなり100点! 青い線が乱れもなくキレイな円を描いています。GOODブレーキは1回、GOODアクセルは5回、GOODハンドルも5回で、ぐうの音も出ません。
このことを妻と子どもたちに伝えると、「100点なんてスゴイ!」などと大喜び。そして、このサービスのからくりを伝えると、妻も俄然やる気がでたようです。
▲いきなり100点という高スコア。
このあとも仕事やお買い物、子どもたちと公園へ遊びに行くといったことをしましたが、すべてが100点という結果に。運転は苦手と言っていましたが、同乗することの多い子どもたちの安全にも関わることなので、より丁寧な運転が身についたのだと思います。
▲結局、すべての運転で高スコアを記録し、100点から落ちることはありませんでした。
新たな保険のかたちが運転改革をもたらす
今回は、ダッシュボードに固定して利用しましたが、車内にスマホを置いておくだけでもちゃんと計測してくれます。走行中に置く位置が変わったとしても、クルマの挙動をしっかり抽出してくれます。これは開発時にサーキットでの走行実験を繰り返し、独自に開発をしたAIアルゴリズムにより実現しているそうです。さらに保険契約者の運転挙動と実際の事故データを紐付けて分析することで、事故リスクを定量化しています。
▲車内のどこに置いておいても、きちんと記録される。撮影のために画面が見やすい方向にしていますが、横向きにしても問題ないです。
こうした開発努力もあり実現したこの「GOOD DRIVE」。Androidスマホだけでなく、iPhoneでも利用可能で、誰でも手持ちのスマホ(※1)で始められます。
実際に使ってみて、筆者は運転に自信があったものの、自分としては意外な結果にショックを受けましたが、今までに妻や子どもたちから急発進・急加速などで指摘されたこともあり、このサービスによって指摘の正しさが証明された形になりました。過去にスピンしたというのも、私のアクセルワークが原因だったのでしょう。本質的には昔から変わっていなかったわけです。やはり身近な人が指摘するより、こうした第三者的なサービスによって気づきを与えてくれたほうが、直そうという気になりますね。おかげで、アクセルワークには気をつけるようになりました。
妻はというと、100点をずっと維持していました。子どもを乗せる機会が多いため、安心安全運転のためにより一層身が引き締まったようです。運転していると、たまにハッとすることもあるようなので、事故が起きない運転を心がけていくとのことでした。
テクノロジーの力によって事故を未然に防ぐ装置がクルマに施される時代ですが、運転する人の意識を改革する新たなテクノロジーによって、より一層世の中から事故が減少していくかもしれません。運転のスコアが上がる=やさしい運転につながり、事故の発生率を低減させていく。そして、自分の保険料は安くなる。この新たな自動車保険は、世のため人のためになるスタンダードのかたちになるかもしれません。
※1 一部対象外のスマートフォンがあります。詳しくはソニー損保のウェブサイトでご確認ください。
【SA19-547】
"戻ってくる" - Google ニュース
March 31, 2020 at 08:47AM
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