「ようやく慌ただしくなってきた。僕たちは選手の活躍が一番うれしい。早く笑顔が見たいですね」。スポーツ用品大手ミズノの社員、菅井洋平(34)さんはシューズを手に取り、しみじみ言った。
陸上選手と、「クラフトマン」と呼ばれるオーダーメード用のシューズ製作者の仲介役。選手の感覚や意見をクラフトマンにわかりやすく伝え、よりよいシューズを提供する。男子走り幅跳び日本記録保持者の城山正太郎(ゼンリン)らトップ選手をはじめ、社会人、大学生、高校生の約30人を担当している。
菅井さんは男子走り幅跳びで日本選手権を4度制し、2015年世界選手権(北京)代表の経歴を持つ。17年に引退後、トップ選手から裏方へ。言葉にしづらい微妙な部分まで感じとるアスリート目線は、選手からの信頼が厚い。
自粛期間中、複数の選手から思いがけない連絡が入った。「シューズがボロボロになってしまったんです。申し訳ありませんが、お願いできますか」。これまで経験のない依頼。シューズの消耗の早さに驚いた。グラウンドが使えず、川沿いのアスファルトや砂利道、土手の坂道で練習を重ねていたからだった。「すぐに新しいシューズを送るから。大変だけど頑張ってね」。そう言うことしかできない。心の中で歯がゆさ、やるせなさ、無力さが押し寄せてくる。選手に寄り添うとは何か。自問自答の日々が続いた。
「五輪イヤーは特別で、選手は人生を懸けて合わせてきた。その時期にこうなって心にぽっかり穴が空いた。練習場所にも苦しんでいる。このような状況で選手と会うことはできない。自分のできることって何だろうとモヤモヤして過ごしていました」
選手、指導者とは電話やLINEで頻繁にコミュニケーションを取っている。だが、顔を合わさないと選手特有の感覚をつかめない。「競技会が再開されたら、できる限り訪問して、表情を見て話をしたい」。感触のいい選手には、さらなる上を目指すための提案を。思い通りの結果が出ない選手にはタイミングや伝え方を考慮し、どうすればパフォーマンスが上がるのかを一緒に考える。
ふと、現役時代を思い出す。何をしてもらうのがうれしかったのか。「振り返ると、期待されているなと感じるのが大きなモチベーションになった。それに応えたいと思った。成績が悪くても、ずっと続くわけではない。だから選手に対しては、常に期待をしていたい」
7月23~26日の東京選手権(駒沢陸上競技場)が菅井さんにとっての今季開幕戦。担当する5選手が出場する。既に今シーズン用のシューズは2月に届けている。ようやく試合で履く日がやってきた。
「久しぶりに競技をしている選手に会える。すごく楽しみですね」
寄り添うとは何かを考え続けた約4カ月。選手に期待をしながら、走り、跳ぶ、その足元を注視する。 (森合正範)
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