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Thursday, July 16, 2020

裏方に回ったトップ選手 ミズノ・シューズ担当者<準備OK!スポーツが戻ってくる> - 東京新聞

世界選手権男子走り幅跳び予選で跳躍する菅井洋平さん=2015年8月、北京で(魚眼レンズ使用・共同)

世界選手権男子走り幅跳び予選で跳躍する菅井洋平さん=2015年8月、北京で(魚眼レンズ使用・共同)

 「ようやく慌ただしくなってきた。僕たちは選手の活躍が一番うれしい。早く笑顔が見たいですね」。スポーツ用品大手ミズノの社員、菅井洋平(34)さんはシューズを手に取り、しみじみ言った。

 陸上選手と、「クラフトマン」と呼ばれるオーダーメード用のシューズ製作者の仲介役。選手の感覚や意見をクラフトマンにわかりやすく伝え、よりよいシューズを提供する。男子走り幅跳び日本記録保持者の城山正太郎(ゼンリン)らトップ選手をはじめ、社会人、大学生、高校生の約30人を担当している。

 菅井さんは男子走り幅跳びで日本選手権を4度制し、2015年世界選手権(北京)代表の経歴を持つ。17年に引退後、トップ選手から裏方へ。言葉にしづらい微妙な部分まで感じとるアスリート目線は、選手からの信頼が厚い。

 自粛期間中、複数の選手から思いがけない連絡が入った。「シューズがボロボロになってしまったんです。申し訳ありませんが、お願いできますか」。これまで経験のない依頼。シューズの消耗の早さに驚いた。グラウンドが使えず、川沿いのアスファルトや砂利道、土手の坂道で練習を重ねていたからだった。「すぐに新しいシューズを送るから。大変だけど頑張ってね」。そう言うことしかできない。心の中で歯がゆさ、やるせなさ、無力さが押し寄せてくる。選手に寄り添うとは何か。自問自答の日々が続いた。

昨年8月に男子走り幅跳びの城山正太郎が日本記録を樹立したときに履いていたシューズを手にする菅井さん=東京都千代田区のミズノ東京本社で

昨年8月に男子走り幅跳びの城山正太郎が日本記録を樹立したときに履いていたシューズを手にする菅井さん=東京都千代田区のミズノ東京本社で

 「五輪イヤーは特別で、選手は人生を懸けて合わせてきた。その時期にこうなって心にぽっかり穴が空いた。練習場所にも苦しんでいる。このような状況で選手と会うことはできない。自分のできることって何だろうとモヤモヤして過ごしていました」

 選手、指導者とは電話やLINEで頻繁にコミュニケーションを取っている。だが、顔を合わさないと選手特有の感覚をつかめない。「競技会が再開されたら、できる限り訪問して、表情を見て話をしたい」。感触のいい選手には、さらなる上を目指すための提案を。思い通りの結果が出ない選手にはタイミングや伝え方を考慮し、どうすればパフォーマンスが上がるのかを一緒に考える。

 ふと、現役時代を思い出す。何をしてもらうのがうれしかったのか。「振り返ると、期待されているなと感じるのが大きなモチベーションになった。それに応えたいと思った。成績が悪くても、ずっと続くわけではない。だから選手に対しては、常に期待をしていたい」

 7月23~26日の東京選手権(駒沢陸上競技場)が菅井さんにとっての今季開幕戦。担当する5選手が出場する。既に今シーズン用のシューズは2月に届けている。ようやく試合で履く日がやってきた。

 「久しぶりに競技をしている選手に会える。すごく楽しみですね」

 寄り添うとは何かを考え続けた約4カ月。選手に期待をしながら、走り、跳ぶ、その足元を注視する。 (森合正範)

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