
誰もがステップアップできる社会をつくりたい――。そんな思いから、低所得者向けの転職支援を手がける会社をつくった女性がいる。もともとは外資系企業などの営業でならしたキャリアウーマン。出産後に再就職先を探した際に不意にぶつかった壁が、起業のきっかけになった。(井東礁)
神戸で育った大津愛。大学卒業後、営業職として外資系の大手電機メーカーに入った。その後も営業一筋、約10年で4社を渡り歩いた。7年前、長男の出産を機に退職。すぐに営業の現場に戻るつもりで、「バリバリ働いて子育てと両立しよう」と考えていた。
ところが産後3カ月がたち、地元のハローワークで求人票をのぞくと、子どもを保育園に送迎しながら働ける営業職は見つからなかった。窓口の担当者に相談すると、「営業は難しい仕事。母親が働いていたら子どもがかわいそう」。古い価値観と思える返答に驚いた。働く意欲も営業の経験もあるのに仕事がない。頼り先もなく途方にくれた。
「これはあかん」
働きたい人が支援を受けられない状況を身をもって知った。だったら「私が相談員の席に座ろう」と、思いのままに就職支援を手がけるNPO法人へと向かった。突然の申し出に最初は断られたが、「営業力を生かして就職先の企業を集める」と粘り強く訴え、採用されることになった。
NPOが支援していたのは、ひきこもりやニートの人らだった。「再就職は難しいのでは」という先入観をもちがちだが、実態はそうではなかった。国家資格のキャリアコンサルタント(CC)を持つ相談員が対応すると、それらの人の6割以上が再就職できた。うち3割は正社員になった。
その多くの人たちが、人間関係のこじれなどからストレスを抱えていた。「プロが相談に乗れば、正しく問題に向き合えて働くことにも前向きになれる。すばらしい」。NPOでは計3年半働いた。その間、自身もCCの資格を取った。
再就職を支援する仕事に携わりながら、次第に目が向いていったのが就職後の問題だった。会社に入っても低い給料のまま働き続け、ステップアップを求めない人が多い。それはどうしてなのか――。
支援サービスを使いにくい低所得者
様々調べるなかで、転職の環…
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