新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考える本連載。コロナ禍でのリカバリーのカギは「デジタル」であることを一貫して訴えてきました。
そして、前回は、デジタル化により先進テクノロジーを導入するには、「スモールスタート」が重要であることを紹介しました。先進テクノロジーを導入するには、一気にプロジェクトを進めるのではなく、PoC(概念検証)フェーズによるスモールスタートによって、期待する結果の確認を行い、その結果の検証ができたら、本プロジェクトに入るという進め方です。これにより、最終的には大規模なプロジェクトになる場合にもリスクを減らすことができます。先進デジタル技術の活用においては、従来の大規模プロジェクトによるソリューション導入と同様のアプローチではなく、スモールスタートで検証してから拡張するほうが堅実な方法になるのです。
このようにスモールスタートが推奨されるのですが、成功させるためにはスモールスタートであれば何でもよいわけではありません。ふさわしいテーマを選定することが重要になります。前回は解決すべき課題の例として「バックオフィス自動化」、そのソリューションとして「RPAソフトウェア」を導入するというケースを紹介しました。しかし、このケースでもまず正しい課題を設定してからPoCを実施することが重要な役割を果たしています。「RPAソフトウェア」を導入することが、本当に「バックオフィス自動化」という課題の解決につながるのかや、「バックオフィス自動化」が本当の課題なのか、どういう状態になればその課題が解決されたことになるのかなど、立ち返るべきポイントがいくつか存在します。
そこで最終回となる今回は、スモールスタートの前提として考えるべき本質的な「課題解決のステップ」について解説します。
本質的な課題解決に役立つ「デザイン思考」とは
繰り返しになりますが「デジタル」はニューノーマルにおけるさまざまな課題の解決手段の1つです。では本当の課題とはどのように見つければよいのでしょうか。顧客が真に欲するもの、あるいは顧客本人ですら気づいていないことを発見し、イノベーションに向けた課題を生み出すためには、今までの考え方とは異なるアプローチが必要となります。そこで重要になるのが、「デザイン思考(Design Thinking)」です。
多くの読者が「デザイン思考」という言葉を聞いたことがあるのではないかと思いますが「デザイナーではないから自分とは関係ない」と考えている人が多いのではないでしょうか。しかし、「デザイン思考」はデザイナーだけのものではなく、ビジネスの場面で誰でも活用できるものです。最近ではさまざまな企業で採用されていて、特にイノベーション創出に使用されています。
デザイン思考は、デザインに必要な思考方法と手法を利用して、ビジネス上の問題を解決するための手法です。まず「デザイン」という言葉の定義を再確認する必要があります。
デザイン思考の「デザイン」は、一般的にイメージされるグラフィカルな見た目、外形を描くことではなく、幅広い意味での「設計」に近い意味で使われています。「新しい機会を見つけるための問題解決プロセス」という定義もあり、デザイナーの考え方を使いながら、イノベーションアイデア、製品、プロセス、戦略などを組み立てます。そして、ユーザー中心の思考法からイノベーションを生み出します。
デザイナーのように考えるためには、時には飛躍したアプローチも必要です。そこからリアルな形で妥当性があるような形に、じっくり時間をかけてテストを行い、仕上げていく形となります。「従来にない」というものを作り出すため、初期段階で失敗することを怖がらないマインドも必要です。
デザイナーのマインドセットは共感、オプティミズム(楽観主義)、イテレーション(繰り返し)、創造性などを含んでいます。そして何よりも、全てのプロセスにおいて「人」を中心にすることが重要です。デザイナーは、「人」にフォーカスし、デザイン対象となるクライアントやエンドユーザーである「人」の言うことに耳を傾けます。そうすることで、彼らが必要としていることを満たすだけではなく、最適なソリューションを生み出すことができるのです。
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