Pages

Saturday, October 23, 2021

ニーアル・ファーガソン「2024年、トランプは再び戻ってくるでしょう」 | 「歴史とは、クソみたいな災いの連続である」 - courrier.jp

andisendi.blogspot.com
画像ギャラリー

Text by Luis Pablo Beauregard

歴史家のニーアル・ファーガソンが何世紀にも及ぶ「災い」についてまとめた新著を出版した。新型コロナウイルス感染症の「災い」からアメリカ政治の「災い」まで、スペイン紙に語り尽した。


ニーアル・ファーガソン(57)は昨年、午後になるとよく、息子に「世界の終わり」について考えようと誘った。彼は9歳のトーマスと散歩しながら、どんなことが災害を恐ろしいものにしうるかについて考えた。

パンデミック初期の数ヵ月間、ファーガソン一家が滞在したモンタナの農場で哲学的な散歩をしながら、父と子は原子炉の故障や火山、地震について話し合った。

こうして、スタンフォード大学に在籍する気鋭の学者であり、保守であり、十数冊の著作を持つ論争好きな作家ファーガソンの頭のなかで、「災い」に関するアイディアが形を持ちはじめた。そして、それは『破滅:カタストロフィと政治』(未邦訳)という著書に出口を見出す。

本書は、火災、洪水、飢餓、戦争、そしてパンデミックなどの災いが何世紀にもわたってあとに残してきたものを詳細に研究した秀逸な一作だ。

スコットランドのグラスゴーで医師の父と物理学者の母のあいだに生まれたファーガソンは、ブラックユーモアたっぷりの本書は「読者を暗い気分にさせるものではない」と言う。

「この本を書くことは慰めになりました。自分や自分の子供たち、家族が直面する課題に対する洞察を与えてくれたのです」

着想はSF小説から


──『破滅』に書かれている研究を読むと、本書がパンデミック中の数ヵ月間、退屈しのぎに書かれたものではないことがわかります。

2019年に、突然ひらめいたのです。ずっと歴史書ばかり読んでいて、SF小説を読んでいませんでした。そこで40年間、ひたすら歴史書を読んでいたのを中断して、再びSFを読むことにしました。「SFに再び恋すべきだ」という確信があったのです。

SF作家たちがいかにして、世界の終わりのさまざまなあり方、あらゆる種類のディストピア的な終焉を想像したかについて思いを巡らせました。そしてそれに関する本を、一種の“未来の歴史”に関する本を書いてみようと思ったのです。

この思いつきは、私の担当編集者たちにはあまり気に入ってもらえませんでしたが、それでも書くことにしました。

劉慈欣(リュウ・ジキン)からマーガレット・アトウッド、さらにはメアリー・シェリーまで、あらゆる作品を貪欲に読み進めるなかで執筆をはじめました。そしてパンデミックが発生したときには、「当然だ、これは起きるべくして起きた」と思いました。

さまざまな災いを比較することは精神的に大きな助けになりました。ユスティニアヌスのペストからチェルノブイリ原発事故に関する記述まで、取り憑かれたように1日中読んでいましたね。

──『破滅』は、私たちの現在の立ち位置を示してくれます。最初からそうしようと考えていたのでしょうか。

そうです。メディアはいつも「これは史上最悪の災いである」と報じ、読者にそのように感じさせようとします。けれども実際には、このパンデミックはワースト20に入るのがやっとです。でも、それでは魅力的な見出しにはなりません。

今回、子供はほとんど死んでいません。また1918〜19年に流行ったスペイン風邪の致死率は約2%で、ペストは約30%でしたが、新型コロナは約0.06%です。というわけで、私の目的の1つは、物事を客観的に見せることでした。
それともう1つは、災いは通常、等間隔で発生するわけではない、という事実を伝えることでした。戦争、パンデミック、火山の噴火、地震などは、ランダムに発生します。歴史家の仕事の1つは、出来事の正しいスケールを示し、そこに至った経緯を説明することです。

ニーアル・ファーガソン。スコットランド出身、1964年生まれ。歴史学者。スタンフォード大学フーヴァー研究所とハーバード大学ヨーロッパ研究センターで上級研究員を務める。2004年米「タイム」誌の「世界でもっとも影響力のある100人」に選出される。『文明:西洋が覇権をとれた6つの真因』、『劣化国家』など著書多数
Photo: Jerome Favre/Bloomberg via Getty Images


──本書は、何世紀にも及ぶ災いの歴史を要約したものですが、なかでも決定的だと思うエピソードはありますか。

すべての災いには、共通する特徴があります。それはある意味、人間の無能さや悪意が生み出したものだ、ということです。人災と自然災害のあいだに明確な違いはありません。洪水であれ、火事、疫病、戦争であれ、そうしたものに遭遇したときの認知的経験は非常に似通っています。

L=F・セリーヌの『夜の果てへの旅』を再読したとき、1940年のフランス軍に所属するのがどういうことなのかが書かれている箇所で立ち止まりました。人々が、何が起きているのかまったくわかっていない様子が描かれています。

あるのはただ混乱であり、無力感と恐怖、そして己の死が近づいているという言い知れぬ予感です。

この感覚は、(帝政ローマの文人)小プリニウスが記したポンペイ地震の記録や、ウィスコンシンの森林火災で炎のなかに取り残された人たちに関する記述を読んだときにも蘇ります。

歴史的な事故の多くの原因は「中間管理職」


──人類が何世紀にもわたって災害に充分備えてこなかったという見解を示していますね。

私たちはよく、「世界の終わり」は壮大なグランフィナーレになるだろうと考えます。けれども、備えができていない中規模の災難に直面したときのことについてはきちんと考えていません。

私たちは1340年に生きた人々より圧倒的に多くの科学的知識を持っています。それにもかかわらず、当時の人々に比べて圧倒的に良い状態にあるわけではない。これは現代のパラドックスの1つです。知識があるからといって、災いに対するより効果的な対策ができるわけではないようです。

近代に入ると、社会は物事に備えるにあたり官僚的なシステムを採用する形で進化しました。そしてそのシステムの管理下で、たとえば、36ページからなるパンデミックへの対応策が作成されます。けれどもそれは、すべてをカバーしているようでいて、まったくそうではありません。

もしサイバー攻撃を仕掛けられても、米国防総省には対応策があるはずだと思うかもしれません。政府がすべてを解決してくれるだろうと期待する人々の受け身的な姿勢は、官僚主義と同じくらい良からぬものです。

過去20年間、アメリカは次から次へと危機を経験してきました。9.11、金融危機、パンデミック。こうしたことはいずれも、ほぼ毎年、TEDトークのなかで予言されてきました。アメリカだけのものではない、システム上の問題があるのです。 

──あなたに対する批判の1つに「政治家の災害対策に対する責任に甘い」という点があります。

私がトランプについて書いたことを読めば、私が彼に甘いわけではないことがわかります。
すべてはトランプのせいで、問題が解決したのはトランプがいなくなったからだとよく考えられています。けれども実際にあるのは、システム上の問題です。

大統領が誰であれ、災いが何であれ、災いに対する対処はまずいものになります。『破滅』を上梓したあと、ロン・クレイン(バイデンの首席補佐官)のインタビュー記事を読みました。そのなかで彼は、2009年の豚インフルエンザが新型コロナと同じくらいひどかったら、オバマ政権に今回と同じような惨事を引き起こしていただろうと認めています。

その後、私は、物理学者リチャード・ファインマンとスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故について考えました。ファインマンが書いた事故に関する本は、私の考え方を変えました。

マスコミは、どんな災難も、とにかく大統領のせいにしたがります。チャレンジャー号の事故の責任は、レーガン大統領のせいにすべきだという突拍子もない考えがあったのです。

ファインマンは、事故の原因はNASAのある職員が、技術者たちが警告した事故発生の確率を「100分の1」から「10万分の1」に変えたことだった事実を証明しました。歴史的にみても多くの事故が、リーダーではなく中間管理職のミスによって起きたと説明できる可能性は高いでしょう。

去年は賢かったのに、今年は無能に


──『破滅』では、「カサンドラにかけられた呪い」にも言及されています。カサンドラとは主流である見解に対して警告を発しても、誰にも相手にされない人のことですね。
カサンドラは常に存在します。ギリシャ神話のカサンドラが無視されたのは、そういう運命にあったからです。カサンドラは国務省にいようと、国防省にいようと関係ありません。公的な職務にある者でも無視されます。

必要なのは災いの早期検知というよりは、災いへの迅速な対応です。そうすることで、死者の数を減らすのです。ですが、アメリカのような大規模な官僚組織は、これが苦手です。その原因の1つは、専門家や官僚が、より多くの情報を得るまで待つ傾向にあることです。欧米の官僚組織のほとんどが、慢性的に即応性に欠けています。


──パンデミックが始まって以来、今も権力の座にいる指導者たちが学んだことはあるのでしょうか。

皮肉なのは、規制で感染拡大を抑え込めなかった者は、その後、ワクチン接種でうまくいき、反対に規制でうまくいった者は、その後ワクチン接種でうまくいかなかったことです。完全に成功した者はいません。

台湾の蔡英文総統やニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相のように、昨年、とてもうまくいった指導者たちは、ワクチン接種率を伸ばすことができていません。

一方トランプは、ほぼすべての面で失敗しましたが、パンデミックへの対応で一番大事なワクチン接種では成功しました。同じことがイギリスでも起きました。ジョンソン首相の上級顧問のドミニク・カミングスは、ワクチンの配布タスクを官僚たちから取り上げて、それをベンチャーキャピタリストの手に委ねることで成功しました。

昨年、賢そうに見えた人たちが、現在は無能に見える状態にあります。

──科学への信頼が低下したことに驚きましたか。

メッセンジャーRNA(mRNA)による革命を実現した人たちは、輝かしい科学的伝統の一部です。先入観にとらわれず、科学的コンセンサスに挑みました。ここ1年半、科学界は素晴らしい貢献をしています。

この新たなパンデミックに立ち向かうにあたり、中国も含めて世界中でおこなわれている科学研究の進歩を追うことほど、心動かされることはありませんでした。感動的です。

──あなたのお母さまは物理学者で、妹さんも科学者ですよね。

はい、イェール大学に在籍しています。科学そのものは成果を上げていますが、公衆衛生はひどい状態です。政治家に助言し、コミュニケーションを図ることを仕事としている科学者たちは、その失敗のせいで、自らの信頼性と科学の信頼性を損ねてしまいました。彼らが犯した過ちは、人々に嘘をついてしまったことです。

アメリカには以前から信頼性の問題があり、軍部以外のほぼすべての組織で状況は悪化したように思います。新型コロナは「公衆衛生版ベトナム戦争」のようなものです。問題がどこにあったのかを知るため、ベトナム戦争後、軍がおこなったのと同じような調査をする必要があります。 

歴史家が本を書くタイミング


──『破滅』では、1957年のアジア風邪にも言及しています。このときアイゼンハワー政権はロックダウンを敷かず、迅速にワクチンを開発することで上手に対処しました。それにもかかわらず、彼は1958年の中間選挙で敗れました。

1958年に共和党が負けたのは、パンデミックとは関係のないことでした。アジア風邪は新型コロナと同じくらいひどいものでしたが、それほど多くの死者は出ませんでした。とはいえ、若者にも犠牲者が出ました。

もし今回のパンデミックで子供たちが集中治療室にいるような事態になっていたら、これはまったく違う話になっていたでしょう。

歴史的にみて、新型コロナは何に近いかといえば、1957〜58年に流行ったインフルエンザ、というのが私の答えです。といっても新型コロナへのアメリカの反応は当時とはまったく異なるもので、アメリカらしからぬものでした。

──状況が好転した10月に『破滅』を書きましたね。でもその後、状況は悪化しました。あなたは、強制的なロックダウンを敷くことを批判していましたが、見解は変わりましたか。
 
私が昨年、書いた文章は含みのあるものでした。私なら街を完全に封鎖することも、すべてを開けておくこともしなかったでしょう。本書を書いたあとで、より感染力の強い新しい変異株が見つかり、抑圧的な対策も役に立たなくなってしまった。予測の難しい出来事でした。私も毎週、新たなことを学んでいます。

──本書を書くタイミングが早すぎたと考える人たちに言いたいことは?

歴史家に対する、良い質問ですね。

私の教え子だったカーター・マルカシアンがアフガニスタン戦争に関する本を上梓したのですが、その書評のなかには「あと20年待ってから書くべきだった」というものもあったと彼に聞きました。

でも、それはナンセンスです。どこで失敗したのかを知るのに20年待つわけにはいきません。一刻も早く歴史を綴ることが急務です。ただし当然ですが、最終的な決着がつくまで、記述のすべてが正しいものにはなりません。

アメリカの政権争いの行方


──あなたが「第2次冷戦」と呼ぶものに、パンデミックはどんな影響を残すのでしょう。

パンデミックが起きる前、多くの人──とくにヨーロッパの多くの人は、この新たな冷戦の存在を認めたがりませんでした。けれどもパンデミックがその存在をあぶり出しました。もう誰もそれがないフリをすることはできません。

第2次冷戦が起きているのは、良い展開だと思います。近い将来、台湾をめぐる熱い対立を終わらせる可能性があるからです。それは来年かもしれません。地政学的な状況は前々から悪く、それはトランプとは関係のないことです。トランプはもういませんが、状況は変わっていません。

大統領選前から、ファーガソンはバイデンのことを「がらくた」呼ばわりしていた
Photo by Spencer Platt/Getty Images


バイデン政権のなかには、トランプ政権以上に多くのタカ派がいます。もし民主党が勝てばその政策が維持され、そのほうが良いことをほとんどの人は理解していませんでした。というのも、トランプは習近平と協定を結びたがっていたからです。

一方、バイデンの側近たちは冷戦状態にあると考えています。

問題は、この危機がいつ訪れるかです。中国が台湾に侵攻して、本当に紛争になった場合、イラク紛争やアフガニスタン紛争とはまったく異なる形でエスカレートするものと思われます。経済的、軍事的コストがどれほどのものになるか、まったくわかっていません。過去20年にあった戦争とは、種類の異なる戦争になるでしょう。

──バイデンは今後どうなるのでしょうか。アフガニスタン撤退はどう影響してくるのでしょう。

下院を失う可能性があります。けれども今となっては、民主党は上院も失う可能性があります。政権全体が、自分たちのせいで危機に陥っていると思います。これは災いの客観的な一例です。

まず軍を撤退させて、そのあとに民間人を退避させるなんて、一体どうすればそんな愚かことができたのでしょう。

私の妻(活動家のアヤーン・ヒルシ・アリ)は、「もしメディアがアフガン撤退以前の7ヵ月のあいだ、彼らがバイデン政権のファンのように振る舞うのではなく、もう少し厳しくしていれば、バイデン政権はこのように浅はかな判断はしなかったのではないか」と書きました。

バイデン政権の判断は理解し難いものです。多くの助言が無視され、アフガニスタンに残される人々がいたとしても、軍を撤退させるメリットのほうが大きいという判断が内部でなされました。

それがバイデンの考えたことであり、大統領補佐官ジェイク・サリバン(国家安全保障担当)の「中産階級のための外交政策」が導き出したものだと思います。彼らはやがて大きな過ちを犯したことに気づくはずです。その代償は大きなものになるでしょう。自分たちの無能さを示してしまったのですから。

今年4月、バイデンは、ルーズベルトやジョンソンのような変革をもたらす大統領になるだろうと言われていたとき、私は、彼はカーターだと言いました。バイデンは「カーター2.0」になるでしょう。

──その結果、2024年にどんなことが起きると?

トランプが勝つと思います。トランプが戻ってくるでしょう。人々は直視したがらないかもしれませんが、アメリカはあまりに悪い状態にあるため、トランプは指名を勝ち取り、戻ってくるでしょう。

トランプ復活となるのか
Photo by Tom Pennington/Getty Images


──本書を書いたことで、あなたの歴史の捉え方は変わりましたか。

アラン・ベネットが数年前、私が主人公のモデルだという『ヒストリーボーイズ』という戯曲を書いたのですが、この作品のなかである人物がこう言います。

「歴史とは、クソみたいなことの連続だ」

でも、今になって気づきました。歴史とは、「クソみたいな災いの連続だ」ということにね。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( ニーアル・ファーガソン「2024年、トランプは再び戻ってくるでしょう」 | 「歴史とは、クソみたいな災いの連続である」 - courrier.jp )
https://ift.tt/30UYqZw

No comments:

Post a Comment