中国人はしばらく日本には戻ってこない
日本の不動産価格下落が不可避な理由とは(写真:J6HQL/PIXTA)
コロナ禍前の日本経済を支えていたのは間違いなくインバウンドだった。中国人が高級ブランド店で「爆買い」する姿はバブルの再来を想起させた。コロナウイルスワクチンが行き渡り、再び外国人が日本を訪れるようになれば、あの景色が戻ってくるのか。本稿では、人気経済評論家・渡邉哲也氏の新著『世界と日本経済大予測2022-23』より、2022年以降のインバウンド事情についてたっぷりと解説する。
もう中国人は来ない
東京五輪が開催される予定だった2020年、日本は年間4000万人の訪日観光客を目標としていたが、その目論見は、新型コロナウイルス禍ですべてご破算となってしまった。
2021年10月1日に緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が解除され、観光業界の復活戦も始まりつつあるようだが、残念ながらコロナ以前のインバウンドはもう完全には戻らないと言っていい。なぜならその中核を占めていた中国からのインバウンドは戻らないからだ。
中国は、海外からの文化輸入をさせたくない。現在の中国は文化的な鎖国状況に近い。習近平が恐れるのはズバリ「自由の味」だ。香港の例を挙げるまでもなく、一度自由の味をしめれば、中国政府に反旗を翻す者が増加するのは当然の成り行きだ。そのため、国民を外国になど自由に行かせたくない。こうした中国政府の姿勢に最も素早い反応をしたのが、いまや中国企業傘下となったラオックスである。
2021年8月、早々と全国13店舗のうち7店舗を閉店してしまった。コロナ禍の影響で外国人が入国できず、売り上げ回復の目処が立たないからとしている。2020年2月に111人が希望退職に応じたのに続き、同年夏には社員、契約社員を対象に250人程度の希望退職者を募っている。かなりあわただしい撤退戦である。
コロナ禍の影響による撤退に擬態しているが、中国企業傘下にあるラオックスが真っ先に逃げ出したことには注目したほうがいい。この先、中国からのインバウンドに未来はないと知る「上からの指示」に違いなく、中国系企業の日本撤退の連鎖は止まらないだろう。
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