ホーバスJAPAN初選出の馬場雄大が新スタイルに挑戦中 [写真]=伊藤 大允
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、20219ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。
日本男子代表チームがFIBAワールドカップ・アジア予選Window4へ向けた2試合の強化試合でイランを迎え、13日の初戦では82−77の勝利を収めた。
過去3シーズン、NBA入りを目指し海外リーグで研鑽を積み、今回の目玉選手の一人である馬場雄大は先発出場を果たし、19得点4アシスト3スティールと万能な活躍ぶりで、勝利に貢献した。
東京オリンピック以来の代表でのプレーとなった馬場は、第1クォーターこそ無得点だったものの、第2クォーターにはドライブからのレイアップやプットバックなどで9得点を挙げ、日本をリードする。後半にはトム・ホーバスヘッドコーチから求められていた3ポイントシュートも2本沈めてみせた。
最大の見せ場は、第2クォーター終盤に味方のスティールに反応した馬場は、速攻からパスを受け、相手選手からファールを受けながらリバースでレイアップを決めた場面だった。海外でやってきたことで「余裕ができた」からこそ決められた得点だったと振り返った馬場のプレーは、会場のゼビオアリーナ仙台を埋めた満員の観衆を沸かせた。
「代表でのプレーが久々だったのでワクワクしましたし、ホーバスHCのバスケは初めてでしたが、自分どうこうというよりはチームとして戦えたのが良かったと思います」
柔和な表情でそう振り返った馬場だが、一方で、初めて経験するホーバスHCのスタイルと、彼から求められる役割の部分で、課題も残った。
コートに立つ全員がアウトサイドに位置取る「ファイブアウト」のオフェンスシステムを敷くホーバスHCのチームにおいて、馬場も3ポイントをより積極的に打つことを求められている。この強化試合に先立ってのメディアとの取材対応でアメリカ人指揮官は、馬場に対して「10本シュートを打つなら7、8本は3ポイントを打ってほしい」と述べていた。
しかし、日本では飛び抜けた身体能力を持ち、これまで武器であるスピードを生かしたドライブインを中心としてきた馬場にとって、代表での「スタイル変更」は容易ではない。試合前日の取材対応では「(3ポイント中心は)言うほど簡単じゃない。もうこの20何年間このスタイルでやってきているので」と話していた。
「新」スタイルへの順応の難しさは実際、今回のイラン戦でも垣間見えた。前半終了間際、馬場はスクリーンを使ってウィングでボールをもらい、3ポイントを打つ体勢に入っていたものの、相手ディフェンダーが手を伸ばしてブロックしようと出てきたこともあり、トラベリングぎりぎりのタイミングで味方にパスを出してしまっている。
第3クォーターにも、河村勇輝(横浜ビー・コルセア―ズ)からパスを受けた際には、3ポイントを打つのかと思いきや躊躇し、ターンオーバーとなってしまった。いずれの場合も、打ってもおかしくないタイミングだったと感じられた。本数的には5本の3ポイントを放った(うち2本成功)が、ホーバスHCは「少なくはないけど、もう2本くらいは打てた」とコメントした。
馬場自身も「ゲーム中に3ポイントを躊躇してHCを見たら『打て』と言っていたケースもありましたし、もう何本かいい形で打てたかなあというのがあります」と反省した。
26歳のSGは過去3年でNBA下部のGリーグ、テキサス・レジェンズやオーストラリアのNBLのメルボルン・ユナイテッド等に所属してきたが、ホーバスHCも自身も、3ポイントなくして彼が目指すNBA入りはなし得ないことを共通認識として持っている。
現役時代、ビッグマンながらシュート力を生かしてトヨタ自動車で日本リーグの得点王に輝いた同HCからは、輪ゴムで打つ手の人差し指と中指をくくることで、その2本の指を意識しながら安定したシュートを放つような「個人指導」も受けたという。
馬場は「良いシュートを(毎試合平均で)6から8本、積極的に打って、高確率で入れないと次のステップへ進めないと考えているので、この(日本代表の)バスケでやることは良い機会だし、すぐに変えられるかはわからないがトライすることが大事。毎試合、ちょっとずつでもスタイルを変えていけたら」と、ポジティブに話した。
しかし、しばらくぶりの日本代表での活動で、しかもホーバスHCの特異なシステムにいきなり慣れられるはずもない。14日のイランとの第2戦と、その先のWindow4と、試合を重ねていくにつれ、3ポイントも含めて彼らしい思い切ったプレーぶりが発揮されていくのではないか。
取材・文=永塚和志
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