“リボーン”と銘打って甦った本作だが,基本的にはシステムの変更やキャラクターとシナリオの追加など,オリジナル版から大胆なリメイクが行われた運命の輪をベースにしている。だが今回の再リメイクにあたり,賛否が分かれたゲームシステムの修正,AIの強化やUIの刷新などシステム面の改良,そしてサウンドのアップグレードやカットシーンのフルボイス化など演出面も含めさらなる進化を果たしており,まさに“決定版”とも言える作品となっているのだ。今回は発売に先駆けてChapter 1(第一章)の終了部分までをプレイする機会を得たので,早速そのプレイレポートをお届けしよう。
なお今回プレイしたのはPS5版で,掲載しているスクリーンショットも本体の標準機能で撮影している。
2022年の今,あの20世紀の名作タクティカルRPGを振り返る
オリジナル版の発売からすでに四半世紀以上が経つタクティクスオウガだが,それ故にあまり馴染みがない世代や,あるいは記憶が相当に薄れている古参ゲーマーも少なくないだろう。なので改めてざっと,概要を振り返っておこう。
本作の舞台は,オベロ海に浮かぶヴァレリアと呼ばれる島。古より海洋貿易で栄えたヴァレリア島だが,いくつもの民族が同居するため,常に戦いの火種が消えることはなかった。だが,後に覇王と呼ばれる名君ドルガルアが戦いの末に島を統一,民族融和策により島に平穏と繁栄がもたらされることになる。
それから半世紀あまり,長く続くと思われていた平和な時代はあっさりと終焉を迎える。ドルガルアの死去と世継ぎの不在,そして外部勢力の参入により,ヴァレリア島は再度戦乱の時代を迎えてしまったからだ。そこで少数民族ウォルスタ人の姉弟であるデニムとカチュア,そして幼馴染みのヴァイスは,内戦に敗れ窮地に至った民族を救うため立ち上がることを決意する。
思わぬ手助けを得られたこともあり,ウォルスタの指導者を解放した3人は,図らずも“英雄”と呼ばれることになる。だがその戦いの先には,決して綺麗事だけでは済まない策謀と,内乱の裏に隠された事実が存在していた……というのが序盤の大まかな流れだ。プレイヤーは,若き指導者となったデニムが率いる騎士団を操作し,ヴァレリア島に平和をもたらすべく戦っていくことになる。
ゲームシステムは,クォータービュー(斜め見下ろし)型のタクティカルRPGだ。プレイヤーはそれぞれのユニットを個別に操作して,マップごとに決められた目標を達成し,次のステージに進んでいく。
ステージをクリアするたびに進む物語は非常にシリアスで,民族紛争の要素が複雑に絡んだ展開は,ゲーマーの間で大きな反響を呼んだ。またマルチシナリオ&マルチエンディングが採用されており,プレイヤーの選択次第で展開がガラッと変わるだけでなく,加入するユニットにも違いが出るため,繰り返しのプレイも楽しみの1つだった。
バトルシステムには,単純なターン制でもリアルタイムでもない「WT」(ウェイトターン)という行動順の仕組みが導入されていて,基本的に行動力が高く装備の重量も軽いキャラクターほど,早く順番が回ってくるようになっている。これによりリアルタイム性はないものの,敵味方が入り乱れて行動する緊張感があるバトルが楽しめるようになっており,これがオリジナル版発売当時は非常に斬新であった。
またグラフィックスはドット絵ベースの2Dタイプながら,立体感がある美しいマップが特に印象的だ。これは単にビジュアル的な要素ではなく,高低差がしっかりとゲームシステムに組み込まれていた。具体的には「隣接していても一定以上の段差があると,移動や近接攻撃はできない」「高所ほど遠距離攻撃の射程が伸びる」などのルールが決まっており,バトル中の戦術に少なくない影響を与えている。
これらの特色は,基本的にリボーンでも変わることはない。筆者がプレイした手触りは“紛れもなくタクティクスオウガそのもの”といった印象だ。
かつての面影を強く残しつつも,システム面で大幅な変化も
今なお知名度が高いタクティクスオウガだが,リボーンは2回目のリメイクということで,システム面だけでなくそれ以外でもオリジナル版から変更された要素は多い。これはリメイク元となる運命の輪からの採用となる要素も含むが,改めてオリジナル版から変わったポイントをまとめておこう。
まず一番目立つ変更点は,職業となるクラスの扱いだ。具体的には,女性ユニットもナイトやバーサーカーにできるし,逆に女性専用だったヴァルキリーは男性版のルーンフェンサーが追加されるなど,クラスは男女共用の存在になった。女性のナイトなどかつて存在しなかったクラスは,グラフィックスが新たに描き起こされており,さらにクラスチェンジの方法も「(固有職を除き)一定のステータスやアラインメントを満たす」から「入手した転職証を消費する」に変わっているため,転職証さえ確保できれば自由にクラスを変更できる。
その一方,「転職証がないとウォリアー(オリジナル版における基本職のソルジャー)にも戻せない」という事態も起こるので,今回プレイした範囲では判断できなかったが,場合によってはレアな転職証の確保には一手間必要になるかもしれない。
クラスそのものにも大幅に手が入っており,例えば前述のナイトはオリジナルの「比較的万能な前衛職」から,「防御力が高く前線維持には非常に役立つが,攻撃力が控えめで殲滅力に欠ける」という特色を持つようになった。これはほかのクラスも同様で,アーチャーはウィザードなどの後衛職には高い攻撃力を誇る反面,前衛職には有効打を与えるのが難しかったり,オリジナル版では単なる下積み職であったウォリアー(ソルジャー)が,ナイトでも装備できない両手剣を扱えるうえ,場合によってはバーサーカーすら上回る強烈な一撃を敵に与えたりなど,かつてのイメージとは大きく異なる活躍を見せてくれる。
こうした変化は,各クラスでレベルを上げることによって取得できるスキルによる影響が大きい。例として挙げたウォリアーは,次に発動する近接攻撃が必ずクリティカルヒットになるマイティインパクトによって低コストで大ダメージが与えられるし,ナイトはファランクスという自動発動のスキルで,敵からのダメージを大幅に低減できる。
HPの最大値アップといった基礎ステータスを上げるものも含め,最大4つ装備可能なスキルをどう組み合わせるかが,ユニットの使い勝手に大きく影響する。クラスによっては一章の時点でもすでに枠を使い切るキャラもいたので,プレイヤーはこの取捨選択に頭を悩ませることになりそうだ。なおスキルとは別枠で必殺技も存在しており,こちらは武器のスキルを上げることによって利用可能になる。
またバトル中に利用できるシステムとしては,「運命の輪 C.H.A.R.I.O.T.」システムが追加されたのが大きなトピックだ。これはバトル中に選択した各ユニットの行動を,任意のターンまで巻き戻して自由にやり直すことができる仕組みである。
例えばあるユニットを突出させてやられてしまったら,移動する前に戻して“なかったこと”にできるし,もっとシンプルに弓で攻撃したら目測を誤り味方の後頭部を打ち抜いてしまったとき,すぐに別の攻撃対象に変えるなんてことも手軽にできてしまう。
このC.H.A.R.I.O.T.システムは序盤に開放されるうえ,使用するのにコストもデメリットも存在しないので,敵がどう動くか推測しにくい初心者(や筆者のような長期のブランクがある人)には,特にありがたい機能だ。巻き戻せるターン数は上限があり,ゲームの進行に合わせて増えていく。さらに「命中率80%の攻撃を外したのでやり直して当てる」といったことはできないが(この場合は何度やり直しても外れる),本作にはAIが勝手に動かすキャラを死ぬ前に助ける必要がある……なんてステージも多いので,リセットの必要がなくなったと気軽に使ってみることをオススメしたい。
また,イベントシーンの増加やキャラクタービジュアルとセリフの変更はもちろんのこと,新たなキャラクターも追加されている。序盤となる第一章の部分では,ウォルスタ解放軍所属でレオナールの同僚である女騎士のラヴィニスと,見た目がえらく変わった魔獣使いのガンプが印象深い。
前述のように,正確にはこれらは運命の輪からの変更点なのだが,本作はキャラクターがフルボイスで喋るため,イベントシーンの臨場感や各キャラクターの存在感が非常に大きくなっている。サウンドも新たに生演奏のものがレコーディングされているため,かつてのイメージと変わらないまま,クオリティがより一層高くなった。
本作はオリジナル版からその重厚なシナリオが評価されてきたが,今回のリボーンでは演出面の強化により,さらに没入感が増したと言えるだろう。
運命の輪からの変更点については,これも列挙していくと多岐にわたる。一例としてはユニット単位では,キャラごとのレベル制とエレメント属性の復活,消費アイテムを装備する形への再変更,装備できる部位の固定化,TPの廃止によるMPへの統一など,どちらかといえばオリジナル版への回帰がうかがえる。
またトレーニングは演習という名称で復活しており,ショップなどがある拠点では自由に何度でもレベル上げができる。だが別途「ユニオンレベル」というレベルキャップが追加されたため,延々と上げ続けることは不可能だ。ユニオンレベルは物語の進行に応じて上昇していく。
なお今作では戦闘終了時に,各ユニットに平等に経験値が山分けされるため,育てたいキャラでひたすら投石するなんてテクニックも必要ない。前述のように低レベルのキャラほど経験値が割り増しになるため,演習に参加させて後方に待機させておくだけで,レベル上げは問題なくできる。いろいろなユニットを前線に送りたい指揮官には,嬉しい配慮だろう。
バトル面では「バフカード」の存在に注目
リボーンならではの変更点としては,「バフカード」の存在が大きい。これはバトル中に発生条件を満たすとランダムマップに現れるカードで,取得すると攻撃力アップやスキルの発動率が上がるなど,ユニットが純粋に強化される。旧作のタロットカードと同じく,取るには“出現したマスの上に移動する”必要があり,強化されるのはあくまでそのステージのみ。要するに,使い捨てのパワーアップ機能といったところだ。
このバフカード,一見おまけ的な要素に見えるが,効果は相当に高い。例えばクリティカル率アップなら,普段はあまり見ないクリティカル攻撃が,たった1枚の取得でも目に見えて発生するようになる。1ユニットが最大4枚まで取得可能で,さらにマップには至る所にバフカードが出現するため,基本的に無視する手はない。
ただしカードは敵も取得できるため,場合によっては強化された敵に立ち向かうハメになり,さらに近接攻撃しかできないユニットは往々にして「カード取得を優先するか,攻撃や前線への移動を優先するか」を選択することになる。バフを消してしまうリセットカードが通り道を塞いでしまうこともあり,なかなかにプレイヤーを悩ませる要素となっている印象だ。
また新たな消費アイテムとして「チャーム」が追加された。これは指定したユニットに直接経験値を与えたり,エレメントを変更したりと,通常のアイテムとはひと味違った効果が発揮される。主な入手先は,バトル後のリザルト画面だ。
また,各バトルにはボーナスタスクがという仕組みが導入され,条件を達成すればチャームも含めてアイテムや追加の経験値などを入手できる。条件は少なくとも第一章の範囲では,特定のクラスをアタックチームに含めたり,戦闘中に何らかのアクションをこなしたりと,基本的に達成が容易なものになっていた。
細かいところでは戦闘前に「偵察」コマンドが実行可能になり,敵の配置や天候などを事前に確認できるようになったので,事前の編成が若干楽になっている。特に説得したいクラスの敵キャラがいる場合,あらかじめ説得スキルを装備しておくなど,役立つ機会も多そうだ。またトレーニング(演習)が復活したからか,ランダムエンカウント戦もなくなっているため,移動中に予期しない戦闘に巻き込まれることもなくなった。UIも全体として現代風になっており,アイコンベースの一覧性が高いものに変更されている。
AIについても刷新されているとのことで,敵の思考時間はほぼないに等しい。同時に戦闘演出の倍速化も可能なので,かなりスムーズにプレイできると感じた。さらにこのAIはプレイヤーも使用可能で,各ユニットに個別に設定もできる。種類も,敵陣に飛び込んで攻撃に専念する「鬼神の如く戦え」や,遠距離から回復に専念する「儚き生命を救え」など分かりやすく分類されており,設定に悩むことは少ない。
ちなみにこのAI設定は演習でも利用できるので,その気になれば半放置でレベル上げをすることも可能となっている。前述のチマチマ手動で石を投げ合っていた時代から考えると,隔世の感がある。
以上のように全体的に本作は,旧作に比べかなりプレイしやすくなっている,だが,戦闘に関しては前述のようにクラスごとの特徴が大きく変わっており,さらに敵を挟み込んでから攻撃すると発動する挟撃スキルや,遠距離攻撃でも(発動可能な場合は)敵がカウンター攻撃をしてくるなど,考慮すべきことは増えている。著者のように,昔プレイしていたから楽勝……などと考えていると,そのギャップに驚くだろう。
とはいえ本作は紛れもなく「タクティクスオウガ」であり,そういった違いを楽しめるのもまた,旧作をプレイしたゲーマーの楽しみの1つだろう。オリジナル版(とその移植版)以来,タクティクスオウガを触る機会のなかったプレイヤーがこの機会に再度プレイしたいなら,文句なくオススメできそうだ。
また久々にプレイして感じたのは,不思議と古くささをまったく感じなかったこと。いわゆる“レトロゲーム”的な括りではなく,新規のユーザーが手に取るのにも非常に良いタイミングだと思う。間近に迫った製品版の発売を,楽しみに待ちたい。
からの記事と詳細 ( 「タクティクスオウガ リボーン」先行プレイレポート。あの不朽の名作が懐かしくも新しい形で戻ってくる - 4Gamer.net )
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