WHO/WHATを解き明かす10ステップ
WHOとWHATを解説する上で、STP分析と呼ばれる、セグメンテーション(市場やターゲットの細分化)、ターゲティング(狙う顧客や市場の決定)、ポジショニング(自社ブランドの立ち位置確立)の3つのプロセスは外せません。本連載を通して解説する「WHO/WHATの10ステップ」は、これらSTP分析の工程を、独自のメソッドでより詳細に10段階の工程に分解したものになります。
WHO/WHATの10ステップ
STEP1:セグメンテーション
STEP2:潜在ターゲットサイズ
STEP3:獲得難易度チェック
STEP4:ブランドセンスチェック
STEP5:優先順位付け
STEP6:デプスインタビュー(N1インタビュー)
STEP7:インサイト発掘
STEP8:タスクマップ
STEP9:コンセプトライティング
STEP10:コンセプトテスト&ロック
具体的な10ステップの解説に入る前に、まずは簡単にSTP分析について触れておきたいと思います。
STP分析とは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つの英単語の頭文字をとって名付けられた分析法で、マーケティング論で知られるフィリップ・コトラーが提唱したフレームワークになります。
セグメンテーションは、数多あるターゲット顧客を、特性に応じて細分化していく工程です。性別、年齢や家族構成といった人口統計学的な属性であるデモグラフィックから、住んでいるエリアなどの地理的属性であるジオグラフィックはもちろん、価値観やライフスタイルのような心理的属性であるサイコグラフィック、またカテゴリーやブランドに関する関与度などに関わる行動変数など、様々な指標でターゲットを細分化します。
ターゲティングは、セグメンテーションで細分化したグループのうち、どこをターゲット顧客群とするかを絞り込む工程です。細分化した結果、すべての顧客を狙っていこうという判断をしてしまうとセグメンテーションを行う意味がありません。きちんとターゲット顧客を絞り込んで、そこの顧客に刺さるプロダクトやコミュニケーション開発を行っていく必要があります。
ポジショニングは、セグメンテーションで細分化し、ターゲティングを行ったグループ内において、競合の商品やサービスを見て自社の立ち位置を決定する作業です。価格帯や、サービスの品質などにおいて、縦横の軸でマッピングすることが一般的ですが、それでは不十分なことが多いです。STP分析の結果、顧客や市場の状況を把握したものの、自社のプロダクトやサービスの何を押し出せれば良いかわからないという場合、ここのポジショニングの工程に、あまり時間がかけられていないことが多いです。
私が打ち出す「WHO/WHATの10ステップ」では、ポジショニングの工程において、最終的にコンセプト開発を行うことを推奨しています。コンセプトとは、インサイト、プロダクト名&概要、製品ベネフィット、RTB(Reason To Believe:製品ベネフィットの根拠)から構成される、1枚のシンプルな製品の概要書になります。このコンセプト作成後、4P(Product, Price, Promotion, Place)や6P(Product, Price, Promotion, Place, Proposition, Package)と呼ばれるマーケティングミックスの開発に移ることにより、ターゲットが本当に求めているプロダクトを開発することが可能になります。
本記事では、まず「WHO/WHATの10ステップ」の全体像と、各ステップそれぞれの目的などについて簡単に解説します。そして次回以降の記事において、一つ一つのステップの具体的な方法をフォーマットとともに解説していきます。
STEP1-2:セグメンテーション
まずは、STEP1とSTEP2です。こちらはセグメンテーションの工程に属します。
STEP1:セグメンテーション
WHOを設定する第一段階として、セグメンテーションがあります。恐らくほぼすべてのマーケターが聞いたことのある手法である一方で、どのようにセグメンテーションをすれば良いか、その定義については曖昧な方も多いのではないでしょうか。
セグメンテーションとは、対象の顧客を様々な角度から分類することです。分類をすることによって、狙ったターゲットの確かなインサイトを捉え、WHATを明確にすることができます。「WHO/WHATの10ステップ」では、このセグメンテーションの時点で、各セグメントにおける潜在顧客数を割り出します。これにより「各セグメントにいるターゲット顧客のうち△%の方に○円で□個買ってもらうと、これくらいのビジネスサイズになる」という大まかなプランを立てることができるからです。
潜在顧客のターゲット区分については、下記のような分類方法があります。デモグラフィックと呼ばれる年齢や職業、家族構成での区分や、ジオグラフィックと呼ばれる居住地などの情報では、研ぎ澄まされたWHATを定義することは難しいでしょう。一方で、自社ブランドのカテゴリーへの関与度や、カテゴリーに対するニーズ、自社ブランドや競合ブランドの状況を踏まえてセグメンテーションをすると、自ずと何を伝えると自社ブランドに振り向いてくれるかのヒントが多々出てきます。
潜在顧客のターゲット区分
(1)デモグラフィック
(2)ジオグラフィック
(3)サイコグラフィック
(4)カテゴリーへの関与レベル(使用・非使用・購買頻度など)
(5)ブランドへの関与レベル(認知・未認知・使用経験有無、ロイヤリティなど)
(6)競合使用状況
(7)カテゴリーニーズ
何も考えずに年収や年代で区切るのではなく、どういうセグメントで分けるとマーケティング施策を考えるうえで有効かを考えながらセグメンテーションをすることが重要です。
下記は、ある健康志向の高い方をターゲットにしたアルコール飲料ブランドを想定した例です。性別や年齢はもちろん、お酒に対する関与度や飲む目的ななどでセグメンテーションを行っていきます。
STEP2:潜在ターゲットサイズ
セグメンテーションしたなかで、市場規模がどれだけあるか、つまり潜在顧客数が何人くらいいるのかを推測します。具体的には、STEP1で設定したセグメンテーションを元にした量的調査を実施します。各セグメントの割合を、総人口に掛け合わせ、各グループの人数を計算することによって、おおまかな潜在顧客数を把握することができます。
たとえば、とある女性向けの健康志向の高いアルコール飲料ブランドでの上流戦略を設計する際に、下記のようなセグメンテーションを作成しました。パターン1とパターン2だと、どちらのほうが潜在顧客数は多いと思いますか?
パターン1
(A)20代女性
(B)お酒が好きだが、自分はお酒が弱いと感じている
(C)普段、カクテルなどの甘いお酒を飲んでいるパターン2
(A)30代女性
(B)お酒が好きで、自分はお酒が強いと感じている
(C)普段、ワインを飲んでいる
調査を通じて、(A)(B)(C)の割合が算出できるので、それらを掛け合わせていくというシンプルな工程です。それぞれの計算式と、潜在顧客数は、以下の通りです。
パターン1
(A)20代女性:約694万人
(B)Aの中で、お酒が好きだが、自分はお酒が弱いと感じている人:16.5%
(C)AかつBの中で、普段、カクテルなどの甘いお酒を飲んでいる人:55.2%つまり、(A)×(B)×(C)=63.2万人がこのセグメントにいる人数になります。
一方、パターン2は下記です。
パターン2
(A)30代女性:約897万人
(B)Aの中で、お酒が好きで、自分はお酒が強いと感じている人:17.8%
(C)AかつBの中で、普段、ワインを飲んでいる人:32.1%つまり、(A)×(B)×(C)=51.3万人がこのセグメントにいる人数になります。
つまり、パターン1のほうが、11.9万人ほど、潜在顧客数が多いセグメントになるということがわかります。このセグメントのうち、仮に1%のターゲット顧客が実際に製品を買ってくれるとすると、実購買者として、1,190人の差が出てきます。成熟したメガブランドからすると誤差の数字かもしれませんが、駆け出しのD2Cのブランドからすると、どのセグメントを狙うかの選択により、売上が大きく変わってくる可能性があります。
このようなセグメントの切り方はあくまでも一例ですが、このステップを通じて、セグメンテーションによって区切られたカテゴリーをもとに、どれくらいの市場規模がありそうか、ターゲットが広すぎないか、狭すぎないか、という全体像を数値をもとに把握することが大切です。
この工程において、各セグメントの潜在顧客数を、数字を計算した後に、潜在顧客が大きいものを3、中くらいのものを2、小さいものを1として、3段階で点数化を行ってください。後ほど、他の指標と併せて、優先順位をつける際に必要になります。
Excelやスプレッドシートで、セグメンテーション毎に点数をつけて一覧化することをおすすめします。下記は、点数化をつけていくアウトプットのイメージです。
次に、STEP3からSTEP6になります。こちらは、ターゲティングの工程に属します。
からの記事と詳細 ( WHO/WHATを解き明かす「上流マーケティングの10ステップ」とは - MarkeZine )
https://ift.tt/0dxMeSH
No comments:
Post a Comment