ダッソー・システムズ、PTC、シーメンスの3社が寡占するグローバルのPLM市場において、2000年代に新興ベンダーとして参入したのがアラス(Aras)である。オープンソースソフトウェアをベースに、カスタマイズ性や他ツールとの接続性などを特徴とする「Aras Innovator」で存在感を高めてきたが、2021年からSaaSとしての提供を開始し、さらに採用を広げるなど好調に推移している。
このAras InnovatorのSaaS化と同期する形で、2021年10月に創業者のピーター・シュローラ(Peter Schroer)氏からCEO職を引き継いだのがロッキー・マーチン(Roque Martin)氏である。2022年9月、アラスのCEOとして初来日したマーチン氏に、これまでのキャリアやアラスの強みなどについて聞いた。
「Aras Innovator」のSaaSではオンプレミスと同じ機能を提供
MONOist アラスのCEOに就任するまでの経歴について教えてください。
マーチン氏 大学でソフトウェアエンジニアリングを学んでから、IBMに約25年間で勤めた。IBMのキャリアの後半では、Rational Softwareの買収によって傘下に入ったモデリングツールなどの事業を担当した。2014年に入社したPTCでは、まずALM(Application Lifecycle Management)ソリューションの「Integrity」の事業を担当した。続けて「Windchill」や「Servigistics」などライフサイクル製品を手掛けており、R&D部門長にも就いた。
IBMでは、さまざまなソリューションのSaaSビジネスへの移行なども手掛けた。ここ十数年のキャリアでは、SaaS市場が大きくなる中でさまざまな経験を得られている。アラスでもこの経験を生かしていけるだろう。
MONOist PLMの競合ベンダーであるPTCから移籍することになりましたが、アラスについてはどのように見ていましたか。
マーチン氏 まずはっきりと伝えておきたいのは、約7年間在籍したPTCへのリスペクトをとても強く抱いていることだ。PTCにとってアラスはPLMの競合だったが、そのころから興味深いソリューションを展開してるとは思っていた。実際にアラスに入社して、その思いはより強くなっている。
Aras Innovatorが最もユニークなのは、エンタープライズソフトウェアとしてローコード開発をベースにした実装のしやすく、進化させやすいところにある。
2021年から、それまでオンプレミスでの提供が基本だったAras Innovatorをクラウド対応にし、SaaS提供できるようにしたことはスタート地点でしかない。ユーザーの要求に合わせてカスタマイズできる、進化させられる点で、大きな革新がある。ほとんどのPLMソリューションは、ベンダーから提供されたものをそのまま使い続けることになる。これはPTCのWindchillも例外ではない。そして、ユーザーに合わせた変更やカスタマイズには、コンサルティングを含めて時間とコストがかかってしまう。
ローコード開発と言う観点では、PTCが「ThingWorx」、シーメンスが「Mendix」を展開している。しかし、これらのローコード開発の機能はPLMとは別のソリューションであり、システムやデータモデルを移したりつなげたりする手間が必要になる。アラスの場合は、Aras Innovatorの中で完結できる点で優位性がある。
Aras InnovatorのSaaS提供では、オンプレミスと同様のカスタマイズ性、オープン性、接続性を実現している。競合のPLMソリューションは、SaaS提供する場合にどうしても機能制限がありオンプレミスと同等にはならない。これも大きな差異化ポイントであり、Aras Innovatorへの移行のきっかけになっている。
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