[シドニー 17日 ロイター] - 中国が今年1月に長期の国境閉鎖を終了すると、電子商取引企業でマーケティングの仕事に携わるティエンニ・レンさん(28)は早速、チームのスタッフ14人によるオーストラリア旅行の計画に取りかかった。ソーシャルメディアで魅了されたピンク色の塩湖が見たかったからだ。
しかし、結局は同僚を連れて行ったのはニュージーランドだった。中国政府が認定する団体海外旅行先のリストから、オーストラリアが除外されたからだ。
450億豪ドル(300億ドル)規模を誇るオーストラリアの国際観光市場では2020年初頭まで、この制度のおかげで中国人観光客が支配的な地位を占めていた。それが、20年ぶりにリストから外れたのだ。
「旅行代理店に問い合わせたところ、オーストラリアは団体旅行リストにないと言われた」とレンさん。「ピンク色の湖を見ることができなかったのは残念」と語る。
中国の認証旅行先ステータス(ADS)では、団体旅行が認められる国として約60カ国を認定している。
オーストラリアでは、中国からの観光客が戻ってくると広く期待されていた。だが、ビザ(査証)の規則に加え、比較的高い旅行コスト、航空便の不足、中国標準語を話すガイドの流出によって極めて低い水準の来訪数にとどまり、オーストラリアで4番目に大きい輸出産業である観光業を圧迫している。
国境再開後の2月、中国からオーストラリアへの短期旅行者は4万0430人だったことが、政府のデータで明らかになった。これは、過去最高年となった2019年の同月の5分の1で、ニュージーランド、英国、米国からの訪問者数に大きく遅れをとっている。
一方、航空分析会社シリウムによると、中国本土からオーストラリアへの航空便の輸送能力は2月時点で、新型コロナウイルスのパンデミック以前の5分の1に縮小している。燃料費の高騰で運賃が上昇し、需要が落ち込んだためだ。
ドイツを拠点とするコンサルティング・グループ、中国アウトバウンド観光研究所によると、中国からの出国者数は、全体的にはパンデミック前の3分の2に回復した。
中国政府はオーストラリアのADS認定を終了した理由を明らかにしなかった。しかし、旅行業界関係者によると、両国の貿易紛争や、安全保障を巡る欧米と中国の対立激化など、地政学上の関係悪化が一因とされる。
オーストラリア政府観光局は、コメントを控えた。
ニューカッスル大学ビジネススクールの講師、ポール・ストルク氏は「悪化している地政学的状況や貿易などに関係しているのは間違いない。現在の状況と、それらを切り離すことはできない」と話した。
ストルク氏によると、中国人は家族の留学先を旅行先に選ぶことが多いという事情もある。2019年までは、オーストラリアが受け入れる外国人留学生の中で最も多いのが中国人だったが、21年にオーストラリアが国境を再開した後、他の国籍の留学生がその穴を埋めてしまった。
<人材の供給制約>
業界関係者によると、オーストラリアの観光産業は外国語を話すガイドのほか、バスの運転手など必要不可欠な働き手の不足によっても制約を受けている。コロナ禍で観光業が落ち込んだのに続き、失業率が数十年ぶりの低さとなり、人材が他の分野に奪われたからだ。
オーストラリア観光輸出協会のピーター・シェリー専務理事は「観光に精通した優秀なスタッフが、大量に失われた」と述べた。
「(中国人は)長い間旅行に行けなかったので、旅行が待ち遠しいという声を聞く。そして、オーストラリアは常にぜひ行きたい旅行先の一つに挙げられているのだが、(肝心の)観光客にサービスする能力が低下している」という。
オーストラリアを個人旅行している何人かの中国人はロイターに、宿泊施設やツアーを手配してくれる親戚がオーストラリアにおり、言葉の壁などを回避できるため訪れたと説明した。
一方、インドからオーストラリアへの旅行者は昨年、2019年の80%水準に戻り、同国において現在4番目に大きい海外からの旅行客層となっている。
中国人観光客とホテルやクルーズ船をつなぐイージー・ゴーイング・トラベル・サービシズ(パース)のディレクター、ジョニー・ニー氏は、同社の提携組織は国内旅行者に対応することで中国人観光客が減った分の不足を補っていると説明。「中国人観光客が一斉に戻ってくると、需要に供給が追いつかなくなるのではと心配だ」と語った。
(Stella Qiu記者、 Byron Kaye記者)
からの記事と詳細 ( アングル:豪州に中国人観光客戻らず、団体旅行認定されず打撃 - ロイター (Reuters Japan) )
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