2大会ぶり8回目出場の静岡聖光学院は、静岡勢8大会連続の初戦突破を決めた。元日本代表の小野沢宏時氏(45)を父に持つFB謙真副将(3年)が、花園初トライを含む4トライ5ゴールの大暴れでけん引し、71度出場の秋田工を下した。天理(奈良)、長崎南山、高鍋(宮崎)などが2回戦進出。大会史上初めて部員不足による合同チームとして出場した若狭東・敦賀工(福井)は目黒学院(東京第2)に7-62で敗れた。

    ◇    ◇    ◇

相手から響く「オノザワ! オノザワ!」の声。厳しいマークにも、小野沢は揺るがなかった。後半開始早々には、自陣で相手のキックを捕球すると、スピードを落とさずそのまま中央を突破。元日本代表WTBで通算81キャップを誇る父宏時氏の代名詞「うなぎステップ」をほうふつとさせるキレのあるステップから4つのトライを重ね、「ずっと花園でトライを取りたいと思っていた」と笑った。

本格的にラグビーを始めたのは高校入学前。中学まではサッカーボールを追いかけていたが「中高一貫で(ラグビーをする)友達の姿を見て、素直にラグビーが楽しいって。1年生で先輩に花園へ連れて行ってもらっても、自分は何も出来なかった。今日は過緊張もなく、のびのびできた」とうなずいた。見守った宏時氏も「最初のワンプレーから、攻め続けるという姿勢が見えていた」と目を細めた活躍だった。

観戦に訪れたクラスメートからは「小野沢えぐいて!」と驚きの声が飛んだ。チームの武器は「全員で楽しんで、アタックして、ディフェンスすること」と力を込めた小野沢。最後の花園で、初戦突破からの“うなぎのぼり”を目指す。【中島麗】

◆小野沢謙真(おのざわ・けんしん)2005年(平17)6月2日生まれ、横浜市出身。中学で静岡に転居し、静岡聖光学院中→高に進学。中学まで清水エスパルスSSジュニアでサッカーに励むも、友人の影響でラグビーに転向。父はラグビー元日本代表バックスで、通算81キャップの宏時氏。ポジションはFB。180センチ、87キロ。

○…コロナ禍をへて、開会式が4大会ぶりに行われた。参加51校を代表し、秋田工主将の大沢空(くうあ=3年)が選手宣誓。開会式を行えなかった先輩に思いをはせながら「この聖地花園で、見ている方々の胸が熱くなるようなプレーをします」と、力強く誓っていた。