常にキャリアの向上を狙う
ひとり情シス協会が編集した「ひとり情シス列伝」の第八章は、ひとり情シスを経験しながらIT業界で転職を繰り返してステップアップを図る佐藤正幸さんです。
佐藤さんは、システムインテグレーター(SIer)でキャリアをスタートさせ、世界的なテクノロジー企業に転職。コンサルタントとして最新技術のビジネス適用に尽力し、大規模プロジェクトの開発メンバーにもなりました。さらに、テック系ベンチャー企業に就職した時には、最高情報責任者(CIO)や最高技術責任者(CTO)に近い職務範囲でありながら、小規模な企業であるが故に事実上のひとり情シスとなりました。その後は大手企業に転職しましたが、情シス部門や開発部門ではなく、いわゆる事業部内の経営企画チームに所属しています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるに当たり、最近では、情シスではなく事業部の中にデジタル推進チームを作ることがあります。佐藤さんも、プロジェクトの実現方法や最新テクノロジーの評価、システムの安定運用など、今までの経験をフルに生かしてDXに取り組み、多忙な日々を過ごしています。SIer、ITベンダー、情シス、事業経営と、ここまで幅広くキャリアチェンジをする方はとても珍しいです。その豊富な経験と多角的な視点から、ひとり情シスへの10のアドバイスをいただきました。ここでは、その中の一つを紹介します。
提言:「相手に分かる言葉で語るということ」
ひとり情シスほど、社内でさまざまなタイプや職種の人と接する人はいません。情シスはIT用語しか使わないとしばしば言われますが、それは致し方ないことです。
あまり簡単な説明をすると、相手は馬鹿にされたと思って「そんなこと分かっている」と気分を害することもあるからです。その一方で、当然理解しているであろう上司に説明すると「専門用語ばっかりで、何を言っているか分からない」と突然怒られることもあります。社内だけでもこのようなことが頻繁に起こります。また、ひとり情シスは、コンサルタントや監査など外部との打ち合わせに引っ張り出されることも少なくありません。
全ての場合において、相手に分かる言葉で話すのが望ましいのですが、それぞれの相手に合わせようとするのも大変です。また、そのように対応できたとしても、相手に通じるかは別問題です。そうなると、基本は誰にでも分かる言葉を目指すしかありません。現代は、このように言葉を変換する能力が必要な時代だと思います。言葉の変換能力は技術的なスキルの一部分になっているともいえるでしょう。
多くのスキルと同じで、言語化も本質的な形で勉強しないと吸収できません。まずはさまざまなジャンルの本をたくさん読み、多くの人と会話を楽しんでいきましょう。
- 清水博(しみず・ひろし)
- 一般社団法人 ひとり情シス協会
- 早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、米ヒューレット・パッカード・アジア太平洋本部のディレクターを歴任、ビジネスPC事業本部長。2015年にデルに入社。上席執行役員。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。中堅企業をターゲットにしたビジネスを倍増させ世界トップの部門となる。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。2020年定年退職後、会社代表、社団法人代表理事、企業顧問、大学・ビジネススクールでの講師などに従事。「ひとり情シス」(東洋経済新報社)、「ひとり情シス列伝」(ひとり情シス協会出版)の著書のほか、ひとり情シス、デジタルトランスフォーメーション関連記事の連載多数。産学連携として、近畿大学CIO養成講座、関西学院大学ミニMBAコース、大阪府工業協会ひとり情シス大学1日コースを主宰。
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