第9回 品質不具合対応への処方箋(その9)
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設計課長A:品質不具合の対応が一段落したと思う間もなく、市場からもの(製品)が返ってきました。品質不具合がなくなりません。
講師:市場の品質不具合がなくならないと悩んでいるのはA課長、あなただけではありません。多くの設計課長に共通する課題です。もちろん、悩むだけでは品質不具合は減りません。一緒に考えましょう。
ところで、ものは「なぜ壊れるのか」と問われたら何と答えますか。
設計課長A:折れないように、曲がらないように設計しなければならないとは、いつも考えています。しかし、なぜ壊れるのかと問われると、うーん……。
講師:答えに窮するのはあなただけではありません。多くの設計課長は考えていないのです。
設計課長A:なぜ壊れるのかについて教えて下さい。
講師:驚くほど簡単平易な理由です。「ストレス」があるからです。ものはストレスがなければ永久に同じ状態で存在し続けます。劣化とは無縁です。しかし、現実にはストレスを避けることはできません。例えば、室内にもオゾンや紫外線は存在します。これらにより、多くの樹脂はゆっくりであっても劣化して壊れていきます。コントロールされた室温も厳密にはストレスといえます。
設計課長A:劣化による品質不具合を防ぐには、ストレスに負けない強さを持つ設計にするということでしょうか。
講師:その通りです。品質不具合がなくならないのは、ストレスに見合った設計対応が取れていなかったということです。つまり、A課長にはストレスに勝る強さを持つ設計として、「3つのステップ」を踏んだ設計を実践してほしいと思います。
設計課長A:3つのステップの設計ですか? ぜひその内容を教えてください。
講師:まず、[1]加わるストレスを把握します。次に、[2]把握したストレスに対して設計的な処置を取ります。そして、最後に[3]設計処置の妥当性を評価します。これが3つのステップです。
設計課長A:これまでの経験から「あーそうだ、そうだ!」と合点がいきました。これからは3ステップをしっかりと意識して設計します。
講師:分かったようですね。しかし、事はそう簡単ではありません。3ステップを始めることは容易。しかし、やりきることは限りなくハードルが高いのです。
設計課長A:ハードルですか? ぜひそれも教えて下さい。
講師:まず、1つ目のステップである「加わるストレスの把握」について、自動車部品を例に取り上げます。自動車部品は温度や振動、湿度、塵埃(じんあい)、電気ノイズなど、さまざまなストレスにさらされます。 以下、少し難しくなります。
20年間壊れないように設計する場合、温度ストレスの1つを取っても、20年の間に加わる総温度ストレスの推定が必要です。例えば、部品がさらされる温度分布と各温度別の累積時間を出すところから始めねばなりません。さらには振動や湿度といったストレスごとに20年間の総ストレスを推定する必要があります。大変な作業です。
もちろん、シミュレーションなど日々高まる技術はこの推定値の確からしさを高めるでしょう。しかし、推定であることに変わりはないのです。実環境とは異なる可能性がどうしても残ります。 環境のストレスの把握はハードルが高いのです。
からの記事と詳細 ( 故障を防ぐ設計の「3つのステップ」 - ITpro )
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