Appleがうわさ通り、「ARデバイス」を発表した。「Apple Vision Pro」だ。6月5日(現地時間)のWWDC基調講演で発表されたが、やはりインパクトは大きかった。
短時間だが体験することができた。正直な感想として「これはすごい」。公開されたビデオは、決して「PV詐欺」ではない。
「Appleが開発した初の空間コンピュータ」という触れ込みのVision Proは、過去の「VR機器」とどう違うのか? 体験から感じた市場変化の可能性を考えてみよう。
なお、体験時には写真撮影などが許可されなかったため、実機は別の場所で撮影したものであり、その他は基調講演で公開された映像からの抜粋である。
VRではなく「空間コンピュータ」
Vision Proは非常に洗練されたデザインになっている。特にフロントのカバーガラスは美しい。
一方、全体的な「カタチ」を考えると、ここ2年で広がった「VR機器」のトレンドから離れたものではない。
それはすなわち
- 薄型のレンズを使い、顔の前に来る処理系をコンパクトにして負担を減らす
- バンドで頭の後ろに固定するが、そこでの締め付けはダイヤルで調整
- 周囲や手を認識するためのカメラを多数配置
という手法だ。
しかし、やろうとしていることは「VR機器」とVision Proはかなり異なる。
それこそが「空間コンピュータ」という部分だ。
現在のVR機器は、カメラを使ったシースルーVRができるようになっているが、Vision Proの体験とはかなり質が異なる。
自分がソファに座っていて目の前に机があり、本などが置かれていると考えていただきたい。現実なら「ソファを立って机を避け、前に出てから戻ってくる」という行為は造作もないことだ。
だが、シースルーVRでは意外と難しい。人間の目とカメラでは画角も違うし、見え方も違うからだ。立体感も自然でなければ、物を持つことすら難しい。映像が荒いと「そこにいる」感じは失われる。
しかし、Vision Proではこれが自然だ。現実同様に難なく歩き、ものをつかみ、そこにいる人と対話できる。
空中に映像を表示するとしよう。ホームシアターのように画面が浮かぶのだろうな……と誰でも予想がつくと思う。実際、VR系ではよくある機能だ。
ただ、その自然さや画質は想像を超える。ホームシアターがまるで「そこにある」かのようだ。
自分がいる部屋の空間に巨大な四角い穴が空き、その中で「アバター」の3D版が上映されている……としたらどうだろう? 仮想の大画面が単に出てくるのではなく、「自分の部屋の中に出てくる」ような自然な描写であるのがポイントだ。
映像用のスクリーン同様、Webブラウザの「Safari」や「写真」アプリ、「メッセージ」などのアプリも配置できる。しかも複数、好きな場所にだ。
ウィンドウが半透明である場合、質感としてはすりガラスに似たものになる。そのウィンドウの後ろに人がいると、ちゃんと「すりガラス越しにいる」ように見えてくる。
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