ビジネス環境が急速に変化するなか、DXは企業の競争力を高めるために必要不可欠となっています。しかし、DXは全社を巻き込む大規模なプロジェクトのため「何から手を付けていいかわからない」と悩む担当者は少なくありません。
そこで本記事では、DXの具体的な進め方や手順ごとの注意点、DXを進める上でのポイントを詳しく解説します。
DXとは?DXを進める前に確認すべきこと
DXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称であり、デジタル技術によって業務やビジネスモデルを変革し、企業価値を高めるための取り組みを指します。
DXは、企業の掲げる目的を達成するための「手段」であり、DXの目的は企業ごとに異なります。そのためDXの進め方も1つではなく、目的に応じてさまざまな検討事項が考えられます。DX推進の初期段階で、自社の目的に沿った進め方を検討しておきましょう。
次章以降では、DXを進める上で押さえるべきポイントや、各企業で共通する手順を紹介します。
DXの具体的な進め方5ステップ
DXの進め方は大きく5つのステップに分かれます。
DXを進める上で最も重要なのは、DX推進の目的を明確にすることです。DXを実施する目的は企業によって異なるため「DXで何を実現したいか」というビジョンを初めに策定する必要があります。
ここからは各ステップの内容と注意点について詳しく解説します。
1. DX推進の目的を明確にする
DX推進のビジョンと目的を策定し、経営陣の意思を従業員に表明します。DXは全社に影響を及ぼす可能性が高いため、DXを進めるためには現場を巻き込む必要があります。経営陣だけがDXの目的を理解していても、実際にDXを行う現場での理解が不十分だと、DXが浸透されず形骸化の可能性があります。
DXが十分に浸透するためにも、現場の授業員一人一人がDXの目的を正確に理解しておくことが重要になります。さらに明確な目的が知られていれば、DX推進による業務の変更などへの反感も拡大しないと考えられます。
また、目的を設定する際にはトップの意思を明確にすることが重要です。トップの意思が明確で施策が絞り込まれていることで、取り組み内容に関して理解がしやすく、現場の従業員も協力しやすくなります。さらに、目的設定の際には経営の目的に適しているかという点にも注意が必要です。企業の現状や方向性に合わせて取り組むことによって、DXの効果が損なわれないようにしましょう。
2. 現状を把握し課題を抽出する
業務の棚卸しを行い、既存の社内システムと各業務の関係性、各業務プロセスの全体像などの現状を把握し、課題の整理を行います。
DXの土台となる「社内データを一元管理してスピーディーに経営の意思決定に活用できる状態」を構築するためには、老朽化・複雑化した既存システムの改修や刷新が必要となる場合があります。
また、業務の現状把握では、現場の担当者にヒアリングを行い、現状の業務プロセスにどのような課題があるのかを明らかにしていく作業も欠かせません。無駄な業務や重複している業務があれば、廃止や統合の検討が必要です。ミスが発生しやすい作業や、他に比べて負荷が集中している作業がある場合は、プロセスの改善や、システムによる省力化もしくは自動化を検討します。
3. 社内体制を整える
施策を実行するための社内体制を整えます。整備をスムーズに進めるポイントは主に2点です。
専門家を揃える
現状把握を経て抽出された課題に対して、テクニカルなスキルが不足していて情報システム部門だけでは対処しきれない場合があります。特に業務の自動化と省力化に必要なAIおよびIoTに関するエンジニアリングの知識や、データ分析に欠かせないデータアナリティクスの知識を持つデジタル人材は、育成に時間がかかります。日本全体で人材不足が深刻な問題となっているうえに、コスト面からも採用が困難なことが少なくありません。
そのため、社内リソースだけではIT人材を確保できない場合、外部の専門家に委託するのもひとつの方法です。自社で必要なデジタル人材を獲得してDXを内製で進めるよりも、アウトソーシングにした方が、採用や育成の時間およびコストを省けるので人件費の節約につながる可能性があります。
ただし、DXに関する業務のすべてを外部に任せるのは望ましくありません。プロジェクト全体を統括するプロジェクトマネージャーやビジネスデザイナーなどのポジションは、会社や業界を理解している自社の従業員から抜擢することで効果が見込めます。自社の従業員を責任者にすることで、自社の課題感にあった取り組みを行うことができます。
権威を持ったプロジェクトチームを作る
データ活用やシステム開発に詳しい専門的な人材を揃えるとともに、経営陣とコミュニケーションがとれるプロジェクトチームを組織することが不可欠です。DX推進に伴う業務の変化により現場での反感が想定されますが、経営陣の直轄のチームを作り権威性を持たせることで、現場の従業員が業務へ協力するための動機づけにつながります。
DXに限らず現状の業務を変更したり新しい取り組みを始めたりしようとするときには、生じた変化に適応できない人が出てくる可能性があります。そのため、経営陣の下でDX推進の目的などを理解し実行できるプロジェクトチームが必要となります。
4. DX推進の優先順位をつける
DXにおいて取り組むべき施策は数が多く、一度にすべてを実行することは現実的ではありません。そのため取り組みに優先順位をつけることが重要です。
DXのために必要な取り組みは、企業によってさまざまです。自社が抱えている課題に応じて、その解決に向けて立案した施策ごとに必要な人員やコスト、所要日数などを算出し、基本業務への影響度なども加味してどの施策から実行していくか優先順位を決めましょう。
5. PDCAサイクルを回す
DXの取り組みは、これまでのビジネスモデルを大きく変革する中長期的な試みであり、すぐに成功するとは限りません。そのためPDCAサイクルを回して改善活動を継続することが重要です。実行した施策が事前に決めていた戦略とプロセスに基づいてDXが実施できたのか、KPIの達成状況などを踏まえて結果を分析しましょう。また評価結果をもとに戦略やリソース配分を見直し、必要であれば目標の見直しも行いましょう。
また、DXの取り組みは業務の進め方にも影響します。現場に混乱が生じたり、テクノロジーやデータに関する教育に時間とコストがかかったりと、成果が得られるまでにある程度の負担が生じることも念頭に置いておかなければなりません。
取り組んですぐに結果につながるわけではないことを前提に、長期的な目線で地道にPDCAサイクルを回し続けることが成功の秘訣となります。
DXを進めるうえでのポイント
DXを効果的に進めるためには「DX人材の確保」や「デジタルリテラシーの向上」など、注意すべきポイントがいくつかあります。ここでは主に4つのポイントを紹介します。
単なるツール導入で終わらせない
重ねてではありますが、DXは、単に業務やデータをデジタルに置き換えるだけでなく、デジタル技術を用いてビジネスモデルや業務そのものを変革し、消費者に新しい価値を提供するとともに企業の競争力を高めることが目的です。
ツール導入はあくまでDXの取り組みの一つであり、目的を達成する手段でしかありません。ツール導入で終わらせるのではなく、ビジネスモデルの変革や事業構造の改革を最終的な目的に定め、段階ごとにDXを進めていきましょう。
DX人材を確保する
DX人材とは、DXの推進に必要なスキルと知識を持った人材のことです。ITエンジニアやデータサイエンティストを想像しがちですが、DX推進に必要な人材はITの専門家だけではありません。
DXはビジネスモデルや事業そのものの変革を伴う取り組みであるため、戦略策定や問題解決ができる能力、大所帯のプロジェクトチームをまとめるリーダーシップ、社内外の人と円滑にやり取りを行うコミュニケーションスキル、周囲を巻き込む力など、さまざまな資質が求められます。
そのため営業やマーケティングなどの職種に就いている人でも、リスキリングなどを通じてDX人材への転換が可能です。一方で、プロジェクトをリードしていく責任者は、自社が所属する業界や社内の事情を深く理解している必要があり、外部から見つけるのは容易ではありません。そのため、自社の従業員にプロジェクトマネジメントなどの経験を積ませながら、長期的な視点を持って育成していくことも大切です。
社内のデジタルリテラシーを高める
デジタルリテラシーとは、DXの重要性を理解するために必要な、社会、顧客・ユーザー、競争環境に変化に関する知識を持ち、ビジネスの現場で活用されているデータやデジタル技術に関する知識と、活用方法や留意点に関する知識の事を指します。プログラミングやデータアナリティクスといったデジタルの専門技術を身につけることではありません。
DX推進においては、現場の従業員もデジタルリテラシーが必要となります。例えば、近年話題となっているAI生成システムを活用することで、ITに関する知識が無くてもさまざまな調べ物やアイデア出し、文章作成が可能です。
しかし、得られる回答はインターネット上の情報をベースとしているため、情報の正確性までは保証されていません。また、AIにどのような情報を入力させるか、AIを活用してどのような事業・サービスを提供できるかは人間側で考える必要があります。
デジタルリテラシーを習得するためには社内研修を実施するほか、e-ラーニングや外部のセミナーなどを活用して、企業全体で少しずつリテラシー向上を目指す姿勢が大切です。
全社戦略に基づき社内全体で取り組む
独立行政法人情報処理推進機構が公表した「IT人材白書2020」によれば、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答した企業は、部署ごとや一部部門においてDXに取り組んでいる企業に比べて成果が出やすいと言われています。
DXの進め方でも解説した通り、企業におけるDXの目的を最初に決め、全社戦略を掲げることで現場の従業員の理解を得られやすくなります。1つの部門だけで部分的に取り組むのではなく、役員や現場の従業員も巻き込んでDXを推進しましょう。
まとめ|自社に適したDXの進め方を検討・計画の策定へ
DXを進めるには、自社の経営戦略やビジョンの共有がポイントです。それにより変革の方向性や組織の目指すべきものが明確になります。トップと現場の意識を合わせ、社内のリテラシーを高めつつ、自社の現状に適した計画を策定することを意識してDXを実現させましょう。
インタビュー・監修
パーソルイノベーション株式会社
『学びのコーチ』事業責任者/Founder
柿内 秀賢
法人向けリスキリング支援サービス『学びのコーチ』事業責任者としてリスキリングの支援者数は累計1,000名※を突破。
自身も人材紹介事業の営業部長から、オープンイノベーション推進部立ち上げやDXプロジェクトの企画推進、 新規事業開発を担う過程にてリスキリングを体験。※2023年4月末時点
からの記事と詳細 ( DXの進め方とは?具体的なステップやポイントを分かりやすく解説 | 記事 ... - PERSOL(パーソル)グループ )
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