果たして、朝倉未来は本当にこのまま引退するのか。それとも頭の冷却期間と心身の回復期間を経てリングに戻ってくるのか。その答えは朝倉自身もまだ見つけていないかもしれないが、今回のYA-MAN戦に向けたインタビューで、彼は「引退」を口にしていた。その発言を振り返りながら、“朝倉未来という存在感”に対してどう考えているのかを改めて考える。
■「自由にやりたい」朝倉未来を不自由にする“勘違いした視聴者の声”
朝倉はYA-MANとの対戦発表会見で、「最近、視聴者と有名人の距離が近いというか、勘違いしているのか分からないけれど、視聴者が有名人を自分の意見寄りにしたがっている。『YA-MANとの試合は受けない方がいい』とか。そんなの決めるのは俺じゃないですか。そこに反する意味でも受けました」と、試合を否定する声があるからこそ逆にYA-MANとの試合を受けたと語った。
会見直後、ORICON NEWSの単独インタビューでこの発言について詳しく聞くと、朝倉は次のように考えを明かした。
「ファンと有名人の距離が近くなって、有名人を自分の意見でコントロールしたがる人が増えたと最近すごく感じていて。『YA-MANとの試合を受けないでください』とか、『大みそかの試合に出てください』とか、YouTubeでも『この人とのコラボを見たくなかった』とか。だったらお前が戦えよ、お前は見るなよって話で。主人公はいつでもこっちだし、自分の生き方をしてきたからこそ俺のことを好きになってくれる人も多いと思うんです。だけど、いつしか視聴者が勘違いし始めて、自分の意見でコントロールしたいって人がすごく増えて、そういうのは良くないなと」
日本で一番の知名度を誇る格闘家だからこそ、ファンの中でもさまざまな意見があり、それを直接本人に投げかける人も多いのだろう。さらに、7月の『超RIZIN.2』でヴガール・ケラモフに一本負けした直後には、元K-1 MAX王者の魔裟斗が「格闘技一本に専念した方がいい」と提言し、同調する声が多数上がっていた。朝倉はたびたび「自由が好き」「誰かに縛られたくない」と発言してきた。“格闘家は格闘技だけを真面目にやる”という、旧来のファンが求めるストイックなアスリートという枠に収まらず、YouTubeをやり、BreakingDownをやり、さまざまな事業を手掛ける。枠をはみ出したからこそ朝倉未来という存在が確立されて、多くのファンを獲得したが、そんなファンが彼の“自由”を奪おうとしている。それが大きなストレスと嫌悪感になり、戦うことへのモチベーションを下げてきたのかもしれない。
■地位も名誉も金銭も得てきたが、唯一コントロールできないのが“リング上の結果”YA-MANとの会見の際には、否定的だった大みそかの『RIZIN.45』への参戦について「全然出る予定じゃなかったけど、ある種、YA-MANがやる気にさせてくれた。この流れでケガとかなかったら、もしかしたら気が乗ったら行こうかな」と可能性をほのめかした。
この発言は格闘技ファンに好意的に受け入れられたが、その直後の単独インタビューで「言ったら言ったで期待させちゃうけど、もう誰も俺に期待しないでくださいって感じです」とファンからの期待の声を“負担”に感じているような発言が飛び出した。そして「試合もしないかもしれないし、俺のことはもう引退したぐらいの感じで思ってもらえたら。あとは自分の好きなように試合に出るんで」と本音を吐露した。
ファイターとして強い相手と戦いたい。そんな格闘家としての本能があるからこそ、朝倉はメリットの少ないYA-MANとの試合に挑んだ。それはまるで、自分がコントロールできないほど巨大になった“朝倉未来という存在感”を一度ゼロまでリセットしたい、という密かな思いがあったのかもしれない。
そして、“朝倉未来という存在感”の死に場所にできるかもしれないという思いから『FIGHT CLUB』というリングを選び、自分に憧れてMMAに挑戦したというYA-MANに77秒で介錯された。
7月にケラモフに一本負けし、再起戦でYA-MANに打撃でKO負けという戦績、増え続けるアンチの声、31歳という年齢、そして格闘家以外にも稼ぐ手段は山のようにある。今の朝倉未来には、格闘技で再起するには厳しすぎる状況がそろっている。それでも可能性があるとすれば、周囲からの期待をまったく受けず、自分の意志で自由に戦えると感じた時、朝倉未来は必ず立ち上がるだろう。なぜなら、彼は「戦うことが好き」な、根っからのファイターだから。
地位も名誉も金銭も、普通の人間では到底届かないようなレベルで獲得し、何でも手に入れることができる朝倉未来が唯一手にできないものが、“リング上の結果”であり、今回のYA-MAN戦でも改めてそれが証明された。
今回の引退発言で、しばらくは周囲の雑音からは離れることができるだろう。自由を感じた時、朝倉未来が決断するのは「引退」なのか「復帰」なのか。これまで彼の戦いや言動、YouTubeで楽しませてきてもらったファンたちは、彼にしばしの“自由”を与えてあげてほしい。
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