日本最大のAI専門メディア「AINOW」の編集長が、先進企業の生成AI活用法を大公開。本連載では、生成AIを企業に導入する手順、既存システムとの連携法、プロンプトエンジニアリング術にいたるまで実践的に解説した『生成AI導入の教科書』(小澤健祐著/ワン・パブリッシング)から、内容の一部を抜粋・再編集。国内企業のベストプラクティスを題材に、生成AIを生かしたビジネス変革の方法に迫る。
第3回目は、ベネッセグループの事例を通じ、生成AI導入のステップ、活用を推進する際にぶつかる壁と乗り越え方を紹介する。
――本書を読んでくださっている方が生成AIの導入を検討する際には、どのようなステップを踏めばいいでしょうか。
國吉 生成AI活用を進めるステップでは、まず「体験を作ること」が重要です。自分自身が生成AIを使ってみることから始め、実際の利用体験を通じて、そのメリットや効果を体感しておく必要があるでしょう。
そのうえで、ステップ2は「誰の、何のためのものなのかの特定」です。具体的にどのようなユーザーや顧客に対して価値を提供したいのかを明確にします。この段階での特定が、後のステップで方針を決める際に非常に重要となります。ターゲットの特定をするうえで、最初のステップの自分自身での体感が生きてくると思います。
ステップ3として「差別化の検討」が重要です。生成AIのAPIを利用するだけであれば、多くの人ができてしまい、技術的優位性を作るのは難しい。しかし、自社の持つ独自の情報やリソースなどを組み合わせることで、他のサービスや競合との差別化は図れるはずです。このステップは、当社もまだ実験段階です。
ステップ4は、「プロンプトと応答に至るまでのプロセスの設計」です。ユーザーや顧客からの入力(プロンプト)を受け取り、それに対する適切な応答を返すまでのプロセス設計を行います。この際、お客様がとりうる行動を想像しながら、そこで起こり得る問題をつぶせるように、プロセスを組んでいくことが必要となります。
最後のステップ5では、「入力と出力の調整」を行います。生成AIの入力(プロンプト)と出力を調整し、ステップ2の期待価値とのギャップが生じないように注意しながら、内容や形式を最適化します。例えば、入力調整として、生成AIとの対話の初期段階では、完全に自由な入力を許可するのではなく、選択肢型の入力に制限することで条件を狭め、後に自由記述型の入力を許容することで、調整をかけていくことなどを検討します。
この5つのステップを通じて、生成AI導入・活用の検討を進めていくと、考えが整理できると思います。特に、ステップ2とステップ5はPDCAを考えるうえで重要で、継続的な改善や調整をしていく際に、ポイントになる箇所だと思います。
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