「鍵がない」「きのう着たコートの中にもない」「きのうのバッグの中だった」。なくしちゃいけないものに限ってなくす、こんな経験はありませんか。「この口座の銀行印はどれだっけ?」など、場所だけわかっても困ることもあると思います。どうすれば解決するのでしょうか。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。
大事なものは一つしか無いのに……
前回ははさみをなくさないための秘訣(ひけつ)についてご紹介しました。はさみの配置を工夫したり、思い切ってはさみを何本も買って使う場所ごとに配置したりする、こんな工夫を提案させてもらいました。しかし、印鑑や運転免許証、銀行通帳、パスポートやマイナンバーカードなどなくすと再発行がかなり大変なものに関しては、この「いくつも用意して配置する」作戦は使えないわけです。
そこで思い出して欲しいのが、「スマホどこいったっけ?」という時です。
多くの人はスマホが見当たらない時に、自分の電話を鳴らしてスマホを探します。着信音か振動でスマホがどこにあるかわかるというわけです。
これと同じ仕組みを利用して、なくしものを探し出しやすくするための道具があるんです。「あ、鍵がない。でもスマホと違って、鍵って鳴らせないんだった……」。こんな経験はありませんか? それを可能にするわけです。Tile(タイル)という紛失防止のカード状のものです。スマートトラッカーというそうですね。スマホと接続することで、音を鳴らしたり、地図上で場所がわかったりします。
たとえば、通帳や印鑑などなくしやすいものと共にケースに入れておくと、もし家の中にあるはずなのにない場合に鳴らしながら探すことができます。鍵のキーホルダーにつけてもよし、財布にいれておくのもよしですね。
でもなくしものが非常に多い方にとっては、Tileをいくつも購入して全てにつけておくのは難しいかもしれません。
ADHDの主婦リョウさんは、なくしものが多くて困っています。家の鍵は、しょっちゅう探し回っています。急いで出かけなければならないときに限って見当たらなくて、たいていそんな時には、鍵のありかは、持っていくハンドバッグを替えたときにそこに入ったままだったり、コートのポケットにいれたままだったり、玄関の靴棚の上だったりします。
Tileの小さなサイズのものをキーホルダーにつけるのも有効そうですが、それ以前に、まず探さなくていい工夫があれば、もっとリョウさんは楽に生きることができそうです。つまり、「そもそも家の鍵を定位置に戻す」という習慣です。
モノを定位置に戻す工夫は?
車を運転する時には、今でこそ鍵をハンドバッグやポケットに入れたままでもエンジンをかけられますが、少し前までは、必ず車に乗ったら、鍵を鍵穴に差し込んでからエンジンをかけていました。ですから、車の運転をするときに鍵をなくす人はいなかったのです。
似たような例では、ホテルの中には、個室の内側の鍵ホルダーに鍵を差し込まなければ部屋の電気が使えないタイプのものもあります。この仕組みがあれば、鍵はなくならないわけです。こんなふうに、必ず鍵をそこに戻さないと、物事が前に進まず困る状況が設定できれば、人は定位置に物を戻すようになります。
リョウさんは、「鍵どこ?」問題を解決すべく、外から帰宅したときの自分の行動をよくよく思い出してみました。リョウさんの家の玄関には窓がなく、日中でも暗めです。そのため、リョウさんは帰宅して、鍵を内側から閉めると同時に、玄関の電気を付けます。本当は鍵を挿さないと電気がつかない仕組みがあればベストなのですが、電源スイッチのすぐそばに鍵をかけるフックをとりつけました。これで、帰宅後に必ず行う一連の動作の中で、自然に鍵をフックにかけるという習慣をつけることができそうです。
リョウさんの方法の他にも、こんなアイデアはどうでしょう。
でかけるバッグがいつも同じ方なら、そのバッグにバネ式のキーホルダーをつけて、鍵をぶら下げます。帰宅して家の鍵を開けるときにはバネが伸びるので、バッグについたまま鍵を使えます。帰宅後もバッグから鍵を取り外さず、そのままです。基本的には鍵はずっとバッグについている形になります。鍵は家の中にいるときには必要ないし、おでかけのときにはいつもそのバッグという方なら、これがベストといえるでしょう。キーホルダーで固定するので、バッグの中で鍵が迷子になることもありません。やっとたどり着いた家の前で、荷物も多くて重い中、バッグの中をガサゴソしなくていいのもメリットです。
また、リョウさんは通帳、年金手帳、保険証、母子手帳などがどこにあるのか、いまいちわかりません。家のどこかにあるのでしょうが、小さなものですし、実は気づかないうちになくしていてもおかしくありません。あちこちに点在しているようです。
あけて、取り出すの「2ステップ」とおさらば
しかし、これらを一度探し出して、まとめて収納してみるのはどうでしょう。災害時の避難の時にはそれをまとめて持ち出せます。透明のケースやポーチに入れて、中身がぱっと見てわかる状態でひとまとめにすることをおすすめします。
通常ADHDタイプの方におすすめしているのは、「1ステップ」収納という、引き出しを開ける必要もなく、そのまま手に取れるような、いわゆる「見せる」収納です。
なぜケースやポーチなど取り出す手間をかける方法で収納するのでしょう? それは、たいていの場合、これらの重要書類は同時にいくつかを使うことが多いからです。たとえば契約書へのサインで銀行通帳の情報と印鑑が必要になったり、子どもに関する書類で母子手帳と印鑑が必要になったりします。そのような時には、その透明ケースさえ、まとめて出して机の上にどんとのせて書類作成作業にあたれば、必要なものをそのつど探しながら作業を中断しなければならないという非効率的なやり方を防げます。
さて、皆さんはどの方法でなくし物を防ぎますか? 自分が「よくなくす物リスト」を作成し、それぞれに対策を立ててみてもよいかもしれません。
◇このコラムの著者である中島の新刊「あの人はなぜ定年後も会社に来るのか (NHK出版新書 644)」が出ました。ぜひお読みください。https://www.amazon.co.jp/dp/4140886447/![]()
からの記事と詳細 ( モノを定位置に戻す工夫 「1ステップ」収納のすすめ - 朝日新聞デジタル )
https://ift.tt/2N8sYjx
No comments:
Post a Comment