事業承継は思い立ったらすぐに実行できるというものではありません。親族や従業員への承継、あるいは社外への引き継ぎであって、事業承継をスムーズに行うためには入念に準備する必要があります。そのなかでも特に意識して準備したいのが「見える化」と「磨き上げ」です。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。
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円滑な事業承継のための「5ステップ」
円滑な事業承継を実現するためには、早くから準備に取り掛かり実行に移すことが肝心です。その流れを「事業承継ガイドライン」(中小企業庁)では5つのステップにわけて解説しています。それぞれの要点をまとめました。
ステップ①:事業承継に向けた準備の必要性の認識
事業承継は家庭内の課題なので誰かに相談しづらい、あるいは高齢になったものの日々の経営に追われて承継にまで手が回らないという経営者は少なくないと思います。しかしながら、後継者の選定・教育の期間を考えると、中小企業経営者の引退時期とされる70歳の10年前、遅くとも60歳になったころには準備に取り掛かることが望ましいと思います。
「経営の一線を退きたくない」と考えるかもしれませんが、高齢化による心身のリスクを考慮すると、事業承継は現経営者が元気で、社内外に影響力のあるうちから着手すべきことです。体力が弱ったり、認知症など要介護状態になったりしてからでは納得のいく事業承継をすることができません。
会社に残りたいなら社長は退いても会長職として関与するなど、いくらでも手段はあります。まずは、代替わりの準備が必要なことを自覚することが肝心です。
ステップ②:経営状況・経営課題の「見える化」
事業を円滑に引き継いで、その後も後継者が安定的に経営を行うためには、現状や課題、経営資源などを可視化し、正確に把握しておく必要があります。そのためには財務諸表に計上される資産はもちろん、知的資産など目に見えない資産も明文化しないといけません。
また、経営状況の見える化は現経営者の理解のためではなく、取引先など関係者に対して明らかにする意味合いもあるので、適正な決算書の作成、知的資産の評価が必須です。利益構造や競合に比べた優位性、業界内の地位も知っておくべきなので、業界団体や中小企業支援団体などが主催する勉強会に参加し、情報収集しておくことも考えられます。
なお、会社の経営状況を可視化する取り組みには、先ほど紹介した「事業価値を高める経営レポート」「知的資産経営報告書」に加えて、経済産業省が提供する企業の健康診断ツール「ローカルベンチマーク」なども活用して進めましょう。
会社の経営状況だけではなく、事業承継にまつわる課題も見える化して対応するのがポイントです。例えば、後継者の有無。候補者が挙がったとしても能力や適性、年齢、意欲などを踏まえ後継者にふさわしいか検討しないといけませんし、意思確認のタイミングも考えないといけません。
候補者がいない場合は、M&Aを含め社内外から候補者の可能性を探ります。また、後継者候補に対して親族内株主や取引先から反対される可能性があるなら、その対策を事前に検討し、親族内承継の場合は将来の相続発生時に困らないよう、相続財産の特定、相続税額の試算、納税方法なども考えておきます。
見える化を通じて会社の強み・弱みがわかると取り組むべき課題が明らかになります。後継者に残すことができる経営資産が明確になると安心です。
適切な会計処理を経て客観的な財務状況が明確になると、銀行や取引先からの信用度が高まり、その後の融資・取引が円滑になるといったメリットがあります。
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※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。
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